Letters from the World

ニューヨークでワイヤレス

2003/05/12 15:37

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 NYCWirelessという団体をご存じだろうか?WiFiはじめ、各規格が鎬を削るワイヤレス市場だが、その需要が日に日に増してきているなか、ニューヨーク市とその周辺にホットスポットを増やすことを目的として、2001年に設立された非営利団体(NPO)がNYC Wirelessである。既に各電話会社はワイヤレスLANのサービスを開始しているし、スターバックスの店舗でも有償のサービスが始まっている。しかし公共の場でかつ無償でのアクセス可能というメリットは大きく、市民の期待度は高い。

 この活動で最初のホットスポットとなった、マンハッタン中心部のブライアント・パークでは、隣接する市立図書館と共に、かなり広いエリアでアクセスが可能となっている。このほかにも既に多くのホットスポットが各所に設置されており、ニューヨークは初めてという観光客でも、すぐにネットにアクセスが可能だ。そして何よりこういう活動がNPO(民間非営利団体)主導ということに驚かされる。しかし収益を第一に考えないでこういう活動を行うのは、彼ら曰く「クール(かっこいい)」なことなのだそうだ。

 この時期のブライアント・パークは、春の日差しを楽しむ人で一杯だ。サンドイッチとコーヒーとノートパソコンと言う組合わせで、モニタを前に打ち合わせに熱中しているビジネスマンも多い。公園で仕事をこなすスタイルも、芝生の上のランチタイムも、いかにもニューヨーク的である。携帯電話の普及形態が日本とは違うため、そして仕事や会社という物への考え方の違いから、ホットスポットの意義は日本より高くなると思われ、この活動は今後一層重要性を増していくだろう。先日そのブライアント・パークの前で、ワイヤレスLANをPRする雑誌が配られていた。覚えのあるデザインの表紙は、よく見れば有名なIT系雑誌が自らをパロディ化して「UN WIRED」とある。その洒落たセンスもまたニューヨーク流であった。(ニューヨーク発)
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