北斗七星

北斗七星 2003年6月9日付 Vol.993

2003/06/09 15:38

週刊BCN 2003年06月09日vol.993掲載

▼土木業界の言い伝えに、「トンネル工事の現場で口笛を吹くな」というのがある。口笛を吹くと、何故だか切羽(坑内作業現場)の崩落事故が起こるそうだ。単なる迷信だろうと聞いてみたら、そんなに単純でもないらしい。崩落が起こる予兆として、どこからともなく「ヒュー」という音が聞こえてくるそうで、作業員にとっては忌み嫌う音なのだ。それが口笛に似ているため、「そんな音を、冗談でも真似するな」という戒めが言い伝えには込められている。

▼建設の世界は、とかく縁起をかつぐことが多い。最近ではそうでもないようだが、かつては着工や竣工に絡む記者発表の日取りは、大安日に集中することが多かった。わずか10年ほど前までの記憶である。さて、ひるがえってIT業界をみると、そんな慣習は少ないだろうと思っていると、意外にそうでもない。取材後に雑談していると、けっこう縁起をかつぐ経営者が多いことに気付く。インフラとしてのITの役割が高まり、それだけ企業に課せられた事業責任も重くなっているのかもしれない。最先端技術を知り尽くしているゆえに、その限界も分かっていることの裏返しでもあろう。

▼さて、最初に紹介した「ヒュー」という音の正体。実は、崩落寸前の土砂が重みに耐えきれず、軋み合って発している音なのである。あるゼネコンはこの音に注目し、わずかな軋み音をセンサーで感知し崩落事故防止に役立てるシステムを開発している。自然と上手く対話していくのも最新科学の役割なのだろう。
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