Letters from the World

潜在する起爆剤

2003/10/06 15:37

週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載

 世界最大の小売企業であるウォルマートが、入荷商品パレット単位でのRFタグの全面導入を発表した。主要ITベンダーは、自社のもつ商品管理システムに無線商品情報管理機能を付加する作業にこぞって乗り出している。サン・マイクロシステムズは、「Sun One(サン・ワン)」へのRFタグ対応を来年第1四半期までに完了し、今後1年半をかけてJ2EE部品としての統合化を図っていくとしている。SAPはジレット社とともに、これまでの先行試験作業の成果を「SAP R3」のRFタグ対応に生かしていく考えだ。

 オラクルは、来年発表予定の「Oracle AS 11i.10」でRFタグ対応を予定しており、また、IBMはDB2拡張としてすでに開発済のRFタグ機能によりその先行性を主張している。RFタグを利用した無線商品管理システムを構築するためには、RFタグ、無線管理機能、データノイズ処理などの主要技術の上に、ハード、ソフト、サービスなどを網羅するソリューションパッケージを構築する。そのため、幅広い技術が要求される。これらの技術の中で最も重要となるRFタグについては、日本企業の市場先行性が海外でも周知の事実となっている。この状況が、ITソリューションにおける新しいパラダイムの契機となるかもしれない。

 無線定点商品管理という、技術的に見れば元来小振りなシステムに米国主要ITベンダーがこぞって殺到するさまは、その潜在市場規模が膨大であることから、レースに乗り遅れまいとする心理が読み取れる。しかも、この動きは何か刹那的な印象を強くする。

 実効性のあるRFタグシステムを、現時点で稼動できるIT企業は、世界中にすでに数多く存在するのではないだろうか。これらの企業がもつソリューション技術が、何の制約もなしに市場へ投入されることを可能にする枠組みこそが、市況復活を目指す起爆剤として、世界から今、求められているのではないだろうか。(米サンノゼ発:CHIBA SHOTEN, INC. 弘中 伸夫)
  • 1