Letters from the World

中国のIP戦略

2003/10/20 15:37

週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載

 インターレクチュアル・プロパティ(IP)とは、日本語では知的所有権と呼ばれている。代表的なIPは言うまでもなく特許である。また、著作権もIPの中に含まれる。WTO(世界貿易機構)の一員になった中国だが、IPに関していえば、決して厳しいという印象を受けることはない。むしろ、コピーが自由に行なわれているというイメージが強い。しかし、中国はそんなに甘い国なのだろうか。IPを本当に守らない国なのか。少なくとも自国の製品に関してはIPを主張しているところがあるようだ。

 米カリフォルニア州のサンディエゴという町には、サンディエゴズーと呼ばれる有名な動物園がある。そこには中国から贈られた(貸し出された)パンダがいて、そのパンダに赤ちゃんが産まれた。名前は「Hua Mei」。中国では、パンダに赤ちゃんが産まれることは珍しくないが、海外でパンダが妊娠して赤ちゃんが産まれることは決して多くない。ということもあって、サンディエゴでは小さなパンダブームが生まれているのだ。このパンダは中国からレンタルされている。米国と中国の親善という名目かもしれないが、無料で中国から米国に貸し出されているのだ。

 しかし、このパンダにはIPがある。そのIPを利用して、中国は外貨を稼いでいる。パンダ自身は無料でも、パンダや赤ちゃん(Hua Mei)を使ったキャラクターグッズ、アルバム、ぬいぐるみ、絵はがき、Tシャツ…数え切れない商品にすべて「TMマーク」が書かれている。そう、トレードマークがあるのだ。このトレードマークこそが、中国の外貨獲得IP戦略なのだ。パンダという動物を無料で貸し、キャラクターから収入を得る。見事な戦略だ。これほど優れたIP戦略をもつ中国が、自国内でIPをうやむやに扱うはずがない。今、中国への進出を日本のIT関連企業が当たり前のように行なっている。しかし、相手は中国だ。それほど甘いわけがないと私は考えている。(米シアトル発:パシフィックソフトウェア パブリッシング 内倉憲一)
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