ソウルの街角から

<ソウルの街角から>17.ベンチャーバレーの風水怪談

2004/02/02 19:47

週刊BCN 2004年02月02日vol.1025掲載

 先端ITベンチャー産業の街「テヘランバレー」(ソウルの漢江南部に位置するハイテク企業の集積エリア)。今はベンチャーバレーというより金融街に近いが、53階建てのインテリジェントビル「スタータワー」、COEX展示場の「ASEMタワー」は成功したベンチャーの象徴だ。

 でも、そのビルに入居した途端、相次ぐ不祥事で会社が潰れたり、地方に引っ越すことになったり、警察の捜査を受けたり、騒ぎが続いている。ある音楽ストリーミングサイトの場合、釜山で起業し、あっという間に人口の4分の1を会員に獲得したが、「スタータワー」に入居してすぐ著作権訴訟で投資も中断され、数か月で引っ越している。

 風水専門家はこの土地に「火」が凝縮されているので、その熱気に勝てない企業は代々不渡りになると言う。実際、この土地を所有していた個人やLホテルなどは次々に不渡りになっている。このビルを建築した会社も「火」をよけるためピラミッド型に設計したが、結局途中でアメリカの不動産会社に売却してしまった。

 外資系企業は「水」が強く悪影響はなかったが、半分に折れたピラミッド型のビルは入居企業に悪影響を与えると言うのだ。

 市庁前にある「ソウルファイナンスセンター」も同じく「火」が強く、10年間いくつもの企業がそのビルを所有したが、全部建設途中に不渡りになり、結局シンガポール投資庁が買い取り今の姿になった。入居企業も韓国企業より外資系金融関係が多い。実話を元にした話なので「なるほど~」つい頷いてしまう。

 この影響からか、ベンチャー企業では新年「占い」が流行っている。風水専門家に入居ビルを推薦してもらったり、ゲームや新製品の出荷日を決めてもらったりする。オンラインゲームで大成功したW社も風水と占いに少しは頼ったと言う。

 社長の話によると「100%信じるわけではないが、IT産業自体が先端産業にもかかわらず、いつどうなるか分からないので占いに走る人もいる」そうだ。携帯電話やインターネットの有料コンテンツとしても人気の高い占いだが、占いコンテンツは収益になるかどうか占ってもらうところだってあるかもしれない。

 有名ベンチャーの社長達も勤務環境を考えると「スタータワー」よりいいところはないが、入居企業が全て入居した途端訴訟沙汰になっているので、「怖くて悩んでしまう」と口を揃える。それでも「スタータワー」や「ソウルファイナンスセンター」は成功の証に違いない。
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