企業のオフィスには、AIエージェントなど新たなテクノロジーの活用を前提とした高品質な会議環境が求められている。そのような中、それぞれの強みを活かした協業によってAI時代にふさわしい会議ソリューションの提供を加速しているのが、Microsoft(マイクロソフト)、TD SYNNEX、そして「Shure(シュア)」ブランドの音響製品を提供するシュア・ジャパンの3社だ。オンライン会議の課題や新製品の狙い、日本市場への期待について、週刊BCN 編集長の日高彰が3社のキーパーソンに聞いた。
会議の参加者全員に“席”を持たせたい
――(聞き手:週刊BCN日高)オンライン会議が当たり前になった今、マイクロソフトとしては会議にどのような課題があると考えていますか。
ヒグス 状況に応じてオフィスとリモートを選ぶ働き方が定着しましたが、出社した場合も多くの人はなお自分のデスクでヘッドセットを装着して「Microsoft Teams」にアクセスし、ノートPC内蔵のカメラからオンライン会議に参加しています。会議室を使わずに在宅勤務と同じスタイルを取ってしまうのは、従来の会議室のスピーカーフォンやカメラでは在宅時と同じ体験が得られないからです。例えば、会議室から複数人で会議に参加すると、誰が話しているかが個別で認識されず、カメラの位置によっては話者が他の参加者に隠れてしまうことがあります。
マイクロソフト
Teamsエンジニアリング部門
AIパワード ワークスペース プログラム リード
アンドリュー・ヒグス
――会議室にいる一人ひとりが、会話の相手や会議システムに認識されることが大事なのですね。
ヒグス 目標は、会議に参加する誰もが“席を持つ”ことです。全ての参加者の声がはっきりと届き、その姿が映るようにしたいのです。当社の会議室向けコラボレーションソリューション「Microsoft Teams Rooms」では、IntelliFrameや音声認識といった機能を通し、参加者全員が「見られている」「声が届く」と感じられる環境を提供することを目指しています。また、ファシリテーターや通訳といった、Teamsが搭載するAIエージェントが力を最大限発揮するためにも、参加者を認識できることは重要です。
音の違いが会議の雰囲気も変える
――TD SYNNEXではこれまでもさまざまなコラボレーション製品を扱ってきた実績がありますが、それらのニーズやトレンドはどのように変わってきましたか。
國持 ハイブリッドワーク対応の機器が一通り導入し終わった今、課題として浮上しているのは「会議体験の品質をどう上げるか」「環境ごとのニーズにどう合わせるか」です。シュアの製品ならこれらの課題に対応できます。古い例えですが、「車内で流すラジオをAMからFMに切り替えた瞬間、音質の違いによって車内の雰囲気もガラリと変わった」というような経験を持つ方は多いでしょう。言葉のニュアンスや会場の臨場感が伝わるオンライン会議を実現したいと考えています。
ティーディー シネックス
代表取締役社長
國持 重隆
――昨年、シュア・ジャパンとのディストリビューター契約を結びました。
國持 シュアには、話者の感情まで伝わるような会議体験の提供を期待しています。取り扱いを始めたシュア製品を改めて試してみると、音の違いが会議体験に与える影響を強く感じます。数ある会議ソリューションのなかでも、質を求めるお客様に積極的に提案していきたいです。
音声の強みを土台にビデオでも革新
――シュアとしては、今の会議やオンラインコミュニケーションが抱えるどのような課題を解決したいと考えているのでしょうか。
トラウトマン シュアは長年、音響の分野で人々の大切な瞬間の音を捉え続けてきました。その技術の蓄積を会議やコラボレーションの領域にも注いでいます。お客様からは、依然として最大の課題は音声にあると聞いています。それを踏まえて私たちは、部屋の音声をどう拾うか細部にまで注意を払い、すべての声が明瞭に聞こえるよう作り込んでいます。そのようにして生まれたのが、会議室に必要な機器をそろえた「IntelliMix Room Kit」や、最新製品の「IntelliMix Bar Pro Kit」です。
シュア
コラボレーション エコシステム&エンジニアリング
シニアマネージャー
タイラー・トラウトマン
――ビデオバー型のデバイスは既に各社から多くの製品が出ている中、後発でIntelliMix Bar Pro Kitを投入するにあたり、優位性や差別化ポイントはどこにあるのでしょうか。
トラウトマン シュアが強みを持つ音質はもちろんですが、今回の製品では参加者の姿を届けるカメラにも力を入れているのがポイントです。複数のカメラを内蔵したデバイス自体はすでに市場にあるものの、そのほとんどはカメラをビデオバーの中央に配置しているため、良いアングルが得られません。対してIntelliMix Bar Pro Kitは中央に広角・望遠レンズの2つのカメラを、両端に望遠レンズのカメラを配置しているため、明確なアングルで会議室内の全員をしっかり映せます。例えば、話者が他の参加者の陰に隠れてしまっても、AIが別のカメラ映像に切り替えて常に最適なアングルを維持します。
IntelliMix Bar Pro Kitなら会議室をさまざまな角度から映すことが可能だ
Teams Roomsが生む生産性。 「まずは体感してもらうことが重要」
――ほとんどの企業では、各従業員がPC上のTeamsアプリケーションを利用して会議に参加するスタイルが主流です。Teams Roomsデバイスを会議室に置くと、会議体験はどう変わるのでしょうか。
ヒグス Teams Roomsデバイスがあれば、PCに触れなくても参加ボタンを押すだけで会議をはじめられます。自分のノートPCで会議を主催すると他の作業がほとんどできなくなりますが、Teams Roomsデバイスから会議をホストすれば、その心配がなくなります。Teams Roomsデバイスにのみ提供する新しいAI機能もあるため、ここに投資いただく価値はさらに高まるでしょう。Teams Roomsデバイスを会議室に置くことで、一人ひとりの生産性が高まり、誰かが会議のホストになることへのストレスも感じなくて済むようになります。
――TD SYNNEXとしては、こうしたTeams Roomsデバイスをユーザー企業にどう訴求していきますか。
國持 まずは体感してもらうことが重要です。当社はお客様用の会議室6部屋をそれぞれ別メーカーの会議ソリューションで揃え、さらに単品で比較検討できる環境も用意しています。シュア製品もTeamsとセットで使ってもらい、他社との違いを実体験していただく形です。ハイブリッドワークの観点では、品質の高い会議体験がオフィスにあることで「事務所に来る意味」が生まれます。会議の内容に応じて場所を選ぶ時代は、すぐそこまで来ています。
ハード、ソフト、セールス、3社が力をあわせて可能性を広げていく
――マイクロソフトがAIを多くの企業に届けていくうえで、デバイスメーカーや販売チャネルへ期待する役割をお聞かせください。
ヒグス 高品質な音声・映像の提供に加えて、カメラやマイクが捉えるデータをどう活用していくかについても一緒に考えていきたいです。ハードウェアのシュア、ソフトウェアのマイクロソフト、セールスのTD SYNNEXが力を組み合わせれば、AIの活用はさらに広がっていくでしょう。
――TD SYNNEXの販売パートナーの反応や、今後の支援策についてはいかがですか。
國持 「一通り会議用機器は入った」と思っているパートナー様が多い一方、現場では会議システムへの不満が多いのが実態です。機器を変えるだけでその不満を解消できますが、この事実はまだ浸透しきっていません。だからこそ最新の機器を体感してもらい、品質の違いをお伝えすることが重要です。私たちは聞き比べや説明会をパートナー様と定期的に開き、お客様に実際に体験してもらう取り組みを続けていきます。
――シュアでは、IntelliMix Bar Pro Kitの提案先を今後どのように広げていきますか。
トラウトマン オールインワン型のビデオバー製品は、設置が非常に簡単なのが特徴です。天井から吊るしたりケーブル配線したりする必要がなく、手頃な価格で素早く会議環境を整備できます。つまり、高品質な会議環境がすべての会議室に行き渡り、Teams Roomsの機能を利用できるようになるのです。また、「Copilot」を導入する企業の拡大に伴い、音声や映像のデータを最良の形で捉え、保存することの重要性を認識するお客様が増えてきました。デバイスへの投資がCopilotへの投資対効果を引き上げることにもつながっていきます。そこをフックにしてこの製品の提案先を広げていきたいです。