Letters from the World

ソフト開発費の見積り

2004/04/12 15:37

週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載

 ソフトウェアを開発している会社なら絶対誰もが体験しているのがお客様からの突然の仕様変更要望だろう。「言うのを忘れていたけど、XXXも必要なんです」、「良くできたシステムなんだけど、これが違う」、「あとこの機能だけつけてもらえないか」。色々な言い方はあるが、言いたいことはすぐにわかる。正直な話、でき上がってみたら、“もう少し機能が欲しくなった。でも、今以上のお金は払いたくない。なんとか無料で作ってくれないか”という場合が多い。開発という仕事をしていると、顔をつきあわせる時間も多くなる。そうなるとつい勝手なことを言ってしまう。本来機能追加は、開発側からすると嬉しいこと。仕事が多くなるのだから喜ばない理由はない。しかし、困るのが「無料で…」ということだ。

 このような要望を開発会社では仕様変更、米国ではチェンジオーダーと呼ぶ。これは、日本では多くの場合無料で行うが、米国では有料だ。これを聞くと日本の開発会社の方が良心的だが、実際はそうとも限らない。日本の受託開発会社は日本の事情をよく知っていて、最初から仕様変更があるという前提で見積る。いや、日本の受託企業で仕様変更を最初の見積りに含めない会社は聞いたことがない。

 しかし、米国ではこのような見込みを見積りに入れることはない。だから、米国ではチェンジオーダー に関してはお金を支払うのが当たり前だ。しかし、よく考えれば日本の場合、見積りの中に仕様変更の費用が含まれているわけだから、結局お客様は支払っているわけだ。企業側も仕様変更料金が見積りに含まれていることを知っている会社が多い。

 そうなると、(1)最初に仕様を確定する段階で、あいまいな仕様にする。「後で直せば良い」という甘えが生まれる、(2)最初に納品された商品に仕様を追加するのが当たり前になる。これは非常にネガティブな行為である。日本も仕様をもっと大切にする必要がある。そして仕様変更に費用を取れる環境にする必要があるのではないか。(米シアトル発:パシフィックソフトウェア パブリッシング 内倉憲一)
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