Letters from the World

連戦、あるいは停戦?

2004/04/19 15:37

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 台湾の3月20日の総統選挙は巨大な政治ショーというイベントに化けてしまった。台湾国民にとっては、真剣そのものであり、また選挙前から、堂々と候補者を応援する姿勢は、開けっぴろげである。応援に熱中し仕事になっていない経営者、公務員、サラリーマンも多い。台湾では、その歴史的経緯、現在の中国との関係を含めた、対外的に不安定な立場などにより、選挙に対する姿勢は実に真剣である。投票率も80%と日本とは比べられないほど高い。

 台湾に家族をおきっぱなしで、大陸で仕事に集中している台湾の友人が3月に1年ぶりに里帰りするという。理由は総裁選への投票である。また、ある台湾のメーカー社内で、社長と普段から右腕となっている幹部社員とが最近、コミュニケーションが悪くなり、業務に支障がでているという。その理由は、2人がそれぞれ相反する候補を応援しているからだ。同様に、夫婦仲が急に悪くなり、離婚に至る場合もあるそうだ。ごく僅かな差で、陳水編が総統に再選されたが、それに異議を唱える野党連合は票の再検査を訴えている。今後の成り行きは不透明ではあるが、内政干渉を控えた米国政府は、祝賀のメッセージを発表した。

 選挙のあと、一週間も総督府前で2000人もの野党陣営が座り込むのも異常だが、その盛り上がりもすごかった。レーザー光線を使った抗議メッセージ、有名歌手のライブ演奏。著名議員のハンガーストライキ、止まることのないイベントとそれをライブで中継する多数のメディア。それを取り巻く臨時の屋台の群れ。不景気な台湾でいま一番景気がいいのは、連戦(戦いをやめない)中の総統府前広場だと皮肉られる。しかし、成熟した民主主義を世界にアピールできたことは、ただでさえ孤立感を強めている台湾にとっては、結果的にプラスになったと言える。(台北発:アコードインターナショナル 原 真)
  • 1