この時期になると米国の通信機器工業会(TIA)が年次報告書をまとめる。このレポートはさまざまな分野についての詳しい統計数字が並べられていて、毎年意外なことがわかる。例えば、2000年のバブル破綻以来、米国の通信業界はひどい不況に直面した。これは間違いないが、このレポートでは不況に関係なく市場規模は過去一貫して増加している。これは意外に聞こえるかもしれない。実際、電話会社や企業の通信投資は、ここ3年バッタリと止まっている。数字を見ても、機器の売り上げは99年の約427億ドル(約4兆7800億円)に比べると03年は141億ドル(1兆5790億円)にまで縮小している。ファクシミリや電話機など家庭向け通信機器も99年から昨年は28パーセントも縮小している。

 ところが、こうした減少にもかかわらず、なぜ米国の通信市場は拡大を続けているのだろうか。その秘密は保守・コンサルティング関連が大きく伸びているからだ。最近の情報ネットワークは、インターネット、IP電話、無線LAN、ウェブサービス、ストレージネットワークなどが密接に絡み合い、以前では想像もつかないほど複雑になった。そこで通信事業者も企業もネットワーク設計や保守を専門家に依存するようになった。

 おかげで、保守・コンサルティングは不況にもかかわらず伸び続けてきた。実際、コンサルティングのトップ「グローバル・サービス」を抱えるIBMは不況知らずの好成績を維持してきた。こうして通信業界の3大分野「機器の販売」、「回線料・サービス」、「保守・コンサル」の内、不況で苦しんだのは機器販売だけということになる。では、その機器販売は回復するのだろうか。TIAの予想によると、昨年がボトムで今年はやや成長する。しかし、06年でも過去最高(99年)の約4割にすぎない。インターネットブームで沸いた通信機器業界の復活は、当分おあづけということらしい。(米サンフランシスコ発:ジャーナリスト 小池良次)