「おいしいワインを教えて」

 最も聞かれて困る質問の1つである。「おいしさ」という味覚は、五感のうちでも最も個人差のある感覚ではないだろうか。「じゃ、あなたのおすすめは?」と聞かれてもねぇ。よほど親しく何度も一緒にワインを飲み交わしている仲でない限り、好みも人となりもわからない人に「この1本を」と勧められるほどワインの世界は狭くない。

 「チリのワインって安くておいしいよね」、というのも返答に窮する。おいしいものもあれば、おいしくないものもある。それにブラインドで飲んだら、生産地などそうそう当たるものではないから、固定観念でフランス的とかカリフォルニア的と決めつけるのは意味がない。

 では、どうやって好みのワインを見つけたらよいのか。

 世界中にはそれこそ星の数ほどのワインがあり、今も続々と新しいワインが生まれている。ワインリストを見て、全く知らない生産者名を発見することもしばしば。できるなら飲んだことのないワインを体験してみたいから、店の人と相談して選ぶことになる。

 その際、大事なのは自分の好みをはっきり知り、それをわかりやすく店の人に伝えること。それが自分好みのワインに出会う近道だ。味わいの感じ方は個人差がかなりあるので、かつて自分が飲んだことがある銘柄を基準にすると、イメージがぶれにくいだろう。好きな造り手を見つけるのもよい。

 あれこれ相談して選んだ結果、ピタリと好みのワインが出てきたときは、思わず頬が緩む瞬間だ。こうして人はワイン道にはまっていくのかもしれない。

 実はこの間、人に選んでもらうワインの楽しさを体験した。銀座のワインレストラン「瑛舎夢」は、ソムリエさんが料理に合わせてワインを次々に選びグラスでサービスしてくれる。シェフはなんとインドの人。カレーが名物のこの店では、本来ワインに合わない料理とされるカレーに合うワインもあって、自分なら決してしないであろう組み合わせを楽しんだ。

 スパイシーな料理には、ワインに甘味がないとダメなのだ。これまで家でカレーを食べるときにはビールという選択肢しかなかったが、今はカレー+中甘口(と私が感じる)ワインを楽しんでいる。

 プロにメイクをしてもらうと、ふだん自分では全く使わない色味の口紅を選んだりして、新しい自分を発見するというが、そんな感じかも。人に選んでもらうなら、このぐらい変化があるのが楽しいな。