北斗七星

北斗七星 2004年7月5日付 Vol.1046

2004/07/05 15:38

週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載

▼参議院戦は真っ只中だが、今ひとつ盛り上がりを欠く。7割の国民が批判的な年金改革法案が成立し、説明責任を果たすことなく自衛隊を多国籍軍に参加させる。それにもかかわらず、国政選挙への関心は低いまま。喉もと過ぎれば熱さを忘れる、というが、それほど時間が経過したのか。日本人の中にある振り子は、よほど大きな振幅で振れるようだ。

▼ふと思い出して「積ん読」状態にあった本を引っ張り出した。金融タスクフォースや道路公団民営化推進委員などを務め、今春から早大大学院教授となった川本裕子さんの「日本を変える・自立した民(みん)をめざして」だ。柔らかな言葉遣いながら、不良債権や年金、民営化問題などに潜む「先送り体質」を明快な論理で斬っている。キーワードは「持続可能性」。これを欠いた制度改正が「失われた10年」を産み、日本の問題解決能力に対する信頼感が失われた。克服するには、持続可能性を考えない「官」でなく、持続可能性を優先する「自立した民」が主役になる必要があると指摘する。そのためには、自由主義経済の一員として、当たり前のことを実践すればいい、と説く。

▼しかし、当たり前のことが難しい。松下電器産業が、業績好調下でも合理化を続行するといえば、マスコミは「なぜ?」という論調で取り上げる。企業として、持続可能性を前提に当たり前の手を打っているだけではないのか。景気好転の兆しに「熱さ」を忘れる日本が、ここにもある。
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