Letters from the World

儲かるブロードバンド

2004/11/01 15:37

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

 世界のブロードバンド普及率で、アメリカはついに10位に後退した。IBMやマイクロソフト、インテルなど世界のコンピュータ業界を支えるトップ企業を産み、世界屈指のパソコンユーザー国でありながら、どうもこの国はブロードバンドが苦手だ。

 とはいえ、来年はネット人口の53%がブロードバンドになり、ついにダイヤルアップ人口を追い越すという(イーマーケット社調べ)。

 そんななか、全米通信事業者協会(USTA)の総会がネバダ州ラスベガスで開催された。同会議でも、やはりブロードバンドの話題はほとんど耳にしない。考えてみれば、DSLやケーブルモデムで利益をあげられるのは、米国では一部の大手通信事業者に限られる。

 では、最近の通信屋はなにを売って儲けているのだろうか。USTA会議を見ると、1番人気はVPN(仮想専用網)サービス。意外にもVoIP電話は2番となっている。VPNが1番とは、興味深いが、背景はこうだ。

 米国では、中小企業がダイヤルアップの根強い信奉者といわれてきた。実際、中小店舗の多くはカード決済にダイヤルアップを使っている。その方が安いということもあるが、ダイヤルアップを使う一番の理由は、普通のインターネットでは「セキュリティが不安」だからだ。アナログ電話なら、簡単には盗聴できない。

 ところが、最近は街のISP(インターネットサービスプロバイダ)がこうした商店を狙ってブロードバンドとVPNをセットで売っている。

 ダイヤルアップより少々高いが、スピードが速いのであっという間にカード決済が終わる。レジの前にお客の列ができないし、売り上げも伸びる。もちろん、VPNだからお客のカード番号を盗まれることもない。

 米国では、ちょっとしたチェーン店だけでも本社が7015か所、支店は23万3087か所に達するという統計もある。その数は、銀行の3倍(ATMは含まない)に達する。こうしてリテールVPNは、業界でちょっとした人気になっている。買い物で現金を使わない米国らしい話だ。(米サンフランシスコ発:ジャーナリスト 小池良次)
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