Letters from the World

情報の質

2004/11/22 15:37

週刊BCN 2004年11月22日vol.1065掲載

 先日、パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長が死亡した。ブッシュ大統領の再選とタイミングを同じくするこの残念な出来事は、今後の世界情勢にも大きな影響を与えることになるだろう。

 米国在住の外国人の身としては、世界平和の維持もさることながら、日々の生活の上で各方面での規制が厳しくなったり、ガソリン価格の無用な高騰などは是非とも避けて欲しいものだ。

 アラファト議長の日々の病状はあらゆるメディアで伝えられてきた。そのため、多くの人は時間の問題と判断していたようであり、一般の人もあまり意外な驚きというものは感じなかったのではないだろうか。

 実際、公式非公式を問わず医療関係者や政府機関からの声明は数多く出されていたし、それらの全てがネットを介して世界中に送られていた。

 しかし、アラファト議長の死亡報道に関しては、社会的な出来事であると同時にネット社会にある今日でさえ、実はそのニュースの品質が向上しているわけではないことが実感される出来事でもあった。正式な病名の発表がなかったこともあってか、各種のデマ報道や根拠のない噂話には事欠かなかった。実際に私に届いた電子メールを見直してみると、正式の死亡発表前までに4通の死亡報道のニュースレターが届いていた。

 インターネットやパソコン、データベースやワイヤレス。今ではありとあらゆるIT技術がわれわれの生活を取り巻いている。全てが素晴らしい技術であり、今のわれわれの生活に大きな恩恵をもたらしていることはいうまでもない。

 しかし、そのなかの情報の質や、情報そのものの取捨選別はやはり人間1人ひとりの判断に大きく依存したままだ。従って、悪意のある判断によってデマが流され、その結果、社会に多大な迷惑をかける可能性も技術の進歩と同時に大きくなっているのである。

 技術に振り回されるのではなく、いかに良識をもった利用方法を徹底できるか。こういうことにもっと世界のIT関係者は注力すべきではないだろうか。(ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)
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