深夜の車窓 寝台列車再考

<深夜の車窓 寝台列車再考>3.くつろげる空間

2005/02/21 15:26

週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載

 「はやぶさ」には、かつての食堂車を改造したロビーカーが連結されている。夜ともなれば、お酒を片手にグループや夫婦連れなどが三々五々集まってくる。寝台車内では迷惑がかかるが、ロビーカーならばその心配はいらない。ただ、車内放送で「備え付けの浴衣ではロビーカーにいらっしゃらないように」という注意があっても、グループ客の中には、すでに浴衣で盛り上がっている乗客も。

 まだ暗いうちに大阪を過ぎ、朝1番の停車は岐阜駅6時29分。ロビーカーに再び人が集まり始める。車内放送が始まり、名古屋駅到着が6時51分。名古屋駅では、弁当やサンドイッチが積み込まれ、ロビーカーで販売される。朝食を求める人が列を作る。名古屋駅からは車内でワゴン販売も始まる。

 朝食を終えると、後は東京まで東海道線をひた走るだけ。振動や騒音が気になる人には、居心地が良いとはいえないが、個室の気楽さもあってノンビリはできる。個室にあるテーブルを使って仕事もできる。テーブルトップを持ち上げれば、洗面台が姿を現す。浜松駅着8時10分。ほぼ同時刻に名古屋駅を出た東海道新幹線「のぞみ」は新横浜あたりを全力で走っている時刻だ。

 寝台車の通路側の窓には、富士山が見え始める。壁に内蔵された椅子を引き出して眺める。こうした気楽さが寝台列車の醍醐味だ。ロビーカーで語らうもよし、もうひと眠りするもよし、列車の端から端まで散歩するのもいいだろう。旅客機では立つことさえ憚られる。

 こうなるとかつて連結されていた食堂車が懐かしくなる。朝、コーヒーを飲みながら車窓を眺められたら、どんなに素敵だろうか。東京駅着11時33分。始発の熊本からならば1300キロ、約18時間。小倉からでも1100キロ余りを「はやぶさ」は走破している。(今賀 至)
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