北斗七星

北斗七星 2005年7月4日付 Vol.1095

2005/07/04 15:38

週刊BCN 2005年07月04日vol.1095掲載

▼1950年、米国でダイナースが設立された。この年がクレジットカード誕生の年とされている。10年後の60年(昭和35年)には小売業の丸井が日本初のクレジットカードを発行。03年の日本でのクレジットカード発行枚数は2億6000万枚。05年3月の1か月間だけで、ショッピングとキャッシングを合わせた与信供与額は1兆9000億円を超える(日本クレジット産業協会調べ)。

▼米国でクレジットカードの個人情報流出事件が起こった。金融機関から決済処理を委託されているカードシステムズ・ソリューションズの4000万件にのぼるクレジットカード情報が不正侵入にさらされ、大量の個人情報が流出した。太平洋の向こう側の出来事と傍観はできない。カード情報の不正使用による国内での被害は約1億2000万円にものぼっている(6月末時点)。現金を持ち歩かなくても気軽に買い物ができる。ネットショッピングでも手軽に決済できる。そんな便利さの裏に、思わぬ危険性が潜んでいたことを思い知らされる事件だ。

▼物を買うにはお金が必要だ。しかし、〝物を買うこと〟がクレジットカードで済むようになり、ともすれば私たちは貨幣を意識することがなくなりつつある。インターネットの時代、物は〝貨幣〟という〝情報〟で買う。『貨幣論』を著した岩井克人・東京大学教授は、「インターネットは旧来の地域や国家を超えた、新たな資本主義経済圏の創出にほかならない」と述べた。1つの情報漏えい事件の背後に、大きな時代のうねりを感じるのは北斗子だけだろうか。
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