「“グーグルではない、何でもいいからそう言え、それだけでいいんだ”とバルマー氏は言いました。“グーグルです”と私が答えると、氏はいきなり椅子を持ち上げて部屋の反対側の机に投げつけてこう言ったのです。“エリック・シュミットの○ソったれの○○○○野郎め。絶対埋めてやる。前にもやったが、またやってやる。グーグルめ、○っ殺してやる”」

 これはマイクロソフト元幹部のマーク・ルコウスキ氏が昨年11月、マイクロソフトを辞めてグーグルに転職した際に元上司のスティーブ・バルマーCEOが見せた激昂ぶりを再現したものである。

 グーグルへの“亡命”問題にあえぐマイクロソフトが、ついに中国拠点のトップ、李開復博士に手を出したグーグルを今夏訴え、その審議のなかで法廷資料として提出された。

 9月半ばの判決で李博士は北京研究開発拠点の採用業務に無事着手できる運びとなったが、マイクロソフトの前職とダブる業務は当面こなせない。「これで中国エンジニア部門副社長も世界一給料の高い人事部長だ」とマイクロソフトは勝訴を宣言。グーグルも負けじと「他にやることは山ほどある」と勝利を宣言した。

 世界中の頭脳と金が集まる今のグーグルの状況は少し前のマイクロソフトだ。マイクロソフトもボーランドから34人の頭脳を引き抜いて訴えられた時には、「100万ドルを出してリムジンでランチ送迎する図々しさ」(ボーランドCEO)だった。

 ところで今回の李博士の転職発覚の糸口は、同氏が社内のパソコン内の「ごみ箱」に捨てた文書がきっかけだが、「競合他社の採用情報を閲覧後、消去プログラムで念入りに削除する手間を怠るほどグーグルからの好条件に舞い上がっていたのか」と、マーキュリー紙はすかさず突っ込みを入れている。

 因みに冒頭の椅子投げ事件は両社の確執を物語る貴重なエピソードとしてネットにあっという間に広まり、今やアップルコンピュータのスティーブ・ジョブズCEOの卒業祝辞に比肩する知名度だ。貧乏くじのバルマーCEOには気の毒と言うほかない。(米サンフランシスコ発)