9月26日、PDA(携帯情報端末)大手のパームはマイクロソフト製のOSを採用した新製品を市場に送り出すことを発表した。これまで同社は自社製のパームOSを採用していた。そしてまさにこれこそが同社の象徴であったため、関係者のみならず同製品群のファンからも、驚きと共に大きな失望の声が発せられている。

 この背景にあるのはやはりiPodだ。マイクロソフトによる「ウィンドウズ・モバイル」OSを搭載するライバル達がシェアを広げつつあったのは事実だが、現在、携帯できるITガジェット(小物)という市場を席巻しているのが一連のiPodであるのは言うまでもない。

 PDA全体での出荷台数は好調に見えるが、スマートフォンなどを除いた売り上げは下がる一方だ。パームもここ数年の戦略の誤りは多くのアナリストに指摘されており、今年5月には業績不振によりCEOの交代を余儀なくされた。

 MP3プレーヤーやPDA、そして携帯電話。PDAで動作可能なVoIP技術も実用化が近く、衛星ラジオも積極的な攻勢を続けている。それぞれの境界線は益々曖昧になり、お互いがお互いの領域に踏み込みつつある今、パームの新製品「トレオ」は、まさにその潮流を具現した製品である。しかし往来より、ファンの愛着度の高さこそがパーム製品の特徴だった。熱狂的な信者が多いことこそが彼らの隠れた資産であり、これは今のiPodも全く同じだ。常に持ち歩く製品であるからこそ、そのスペックよりも感覚的な部分での評価が売れ行きに直結するのはこれまでの成功事例が証明している。

 ソニー以下、一連のOEM(相手先ブランドによる生産)先が次々と市場から撤退した現在、パームはパームOSを採用する唯一のPDAメーカーだった。今回の決断で、近い将来、パームがポケットPCを製作する、その他大勢のメーカーの中の1つになることも十分あり得る。今回パームの採った市場優先の戦略が吉と出るか凶と出るかは、パームファンにとっても非常に気になるのではないだろうか。(米ニューヨーク発)