全米テニス協会(USTA)は、自国のグランドスラム大会であるUSオープンにおいて「ホーク・アイ」の導入を決めたことを発表した。過去数年間に渡り繰り返しテストされ、ようやく採用された。これは、コンピュータによりTV放送用の画像を瞬時に3D処理し、画面上でボールの軌跡を再現することでボールのイン、アウトを判定し、審判をサポートするというものである。このホーク・アイは英国の軍需用IT企業が開発したもので、本来は大陸間を飛ぶミサイルの軌道計測に使われている技術をテニスに流用したものだという。

軍用技術の一般への転用事例では、カーナビ等に利用されているGPSが良く知られているが、今後このようなケースはますます増えていくことが予想されている。米国を始めドイツやフランス、そして英国といった大国は、軍需への出費が国家経済への大きな負担となっている。しかし、新たな売却先を探そうにも、兵器の国家間取引には数多くの制限があり非常に困難だ。そこで一般市場への技術供与を進めることで、少しでもその莫大な研究開発費を補填しようとしているのだという。

そこで懸念されるのが、自国で兵器開発を行っていない国々の将来だ。大国が予算に糸目を付けずに開発した技術が、本格的に市場導入されるとなれば、これまでIT産業を担ってきた国々の労働力は一気に競争力を失いかねない。

 インドや中国でのアウトソーシングの最大のメリットである低水準の賃金は、技術格差を無意味なものにしかねず、さらに彼らは高額なそれらの技術を購入する必要にせまられることも考えられる。

世界の国々の多くは、自軍の兵器の調達を限られた幾つかの大国からの購入でまかなっている。そして、それはそのまま自国の技術水準の成長を制限していることと同義だ。結果として非常に高度な技術水準を必要とされる、軍需でのIT技術を開発するチャンスを失っている。そしてこの懸念は、日本でも同様なのである。(米ニューヨーク発)