Letters from the World

個人情報保護にみる米国的発想

2005/11/14 15:37

週刊BCN 2005年11月14日vol.1113掲載

 米国では、企業による個人情報の悪用を防ぐ機関として、米国連邦取引委員会(FTC)が活動をしている。同委員会のサイトには、次のような一文がある。「FTCは、インターネットの普及で消費者が企業や製品の情報を簡単に得られるようになったメリットと引き換えに、個人情報を利用した犯罪が増えていることを認識している。これに対して消費者の教育を行うとともに、個人情報の悪用を取り締まる法律を設定していく」。この法律は、特に個人の経済的な情報の悪用を阻止することを目的にしている。また、個人の銀行やクレジットカードの悪用で損害を受けた場合に、銀行などはその損害を個人に払い戻さなければいけないという規定まである。悪用された消費者に責任はない。個人ではなく、経済力の大きい銀行や金融機関が個人を損害から守るべきだという法律なのである。

 これは、個人情報をプライバシー保護という観点でとらえた法律で、情報の悪用は人権に関する侵害という厳しいスタンスで対応している。特に個人の経済的な情報は情報価値が高く、これを公開すること自体がプライバシーの侵害となるのだ。

 米国で個人情報を取得することは結構簡単だ。例えば自動車を買いに行って、ローンを組みたいといえば、その個人のクレジットヒストリーを基礎にして、ローンの承認や金利なども決まる。個人のクレジットヒストリーは、詳細でなければ誰でも取り寄せることができる。米国では、基本的に情報を取得するが罪悪だという考えはない。ただし、その情報を悪用した場合に大きな罪になる。

 米国でも日本でもパソコンの盗難は日常茶飯事だが、日本の場合、盗まれた被害者の責任を追及する法律を定められている。しかし、本来は盗んだ人、そして悪用した人を裁くべきというのが米国の考え方だ。

 同じ個人情報の保護という考え方をとっても、日米では大きな違いがある。個人のプライバシーに厳しい米国のシステムと、日本の違いをおわかり頂けただろうか。(米シアトル発)
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