【本郷発】一足早く桜が咲いた。それも大雪の日に桜が咲いた。東京・本郷三丁目の駅舎内の壁面いっぱいにサクラの花が満開に咲いた。天井を見あげると、「きっと、サクラサクよ!がんばれ、受験生。」と書いてある。もうお気づきだろう。チョコレート菓子のKitKatの宣伝だ。驚きはまだ続く。駅舎からセンター試験会場の東大・赤門までの街路樹に桜色のパイロットランプがズラリと点滅した。きれいだ。不安と大雪で、気分も凍る受験生も、「きっと勝つ」の宣伝に気をよくしたのではないか。「サクラサク」の合格通知は東大が本家(その経験はないが)なだけに、よくぞ、ここまでやるもんだ。バレンタインデーのチョコは、メリーチョコレートが仕掛けたと記憶している。ここはチョコの会社を見習って、誕生日には、メッセージを記録した可愛い造りのメモリースティックをプレゼントする習慣を仕掛けてみたらどうだろうか。

▼夕方、根津の裏道を歩いていたら、豆腐屋の音が聞こえた。「パープー」。昔ながらの懐かしいラッパの音だ。のぼりが見える。野口屋だ。これが「大都会をリヤカーが行く」の豆腐製造販売ベンチャーの引き売りだ。販売員は20代の大柄の女性。「油揚げと豆腐をください」。「はい、絹ですね」。「500円です」。「どこで製造しているの?」。こんなやり取りをした。Googleで「野口屋 豆腐」を検索すると、429件でる。調べてみると、本社所在地は築地、製造工場は伊豆大川温泉。引き売りはアルバイト。年商は4億円。いつも買っている地元のお店とは比較にならない規模だ。

▼これはいけない。日頃から“谷根千”の地元商店街の発展を願って、「お買い物は地元で」を実践している都合からすると、これではまるで「とんびに油揚げ」だ。そうだ。なじみのお店のおじさんに提案をしてみよう。「午前中までにパソコンで、注文を受け付けて、午後に宅配をする」。宅配の人手がないのならば、購読している新聞の専売店に話をつけて、夕刊と一緒に宅配してもらってはどうか。ちょっと待てよ。少し先を急ぎすぎたようだ。“谷根千”の良さは、昭和30年代で街の時間が足踏みしていることだった。(BCN社長・奥田喜久男)