旅の蜃気楼

地の果て「西域」の道を往く

2006/09/11 15:38

週刊BCN 2006年09月11日vol.1153掲載

【ウルムチ発】タクラマカン砂漠を旅した。7月上旬の暑い空の下を3083キロ、車で走った。半端な距離ではなかった。タクラマカン砂漠、天山山脈、崑崙山脈、カラコルム山脈、三蔵法師の足跡、シルクロード、ミイラといった、自然と仏の伝来を感じとる、実に浮世離れした旅だ。12日間の旅で感じたことは疲労のほかに、3つある。広い国土。国境とは何だ。中国全土がITの潜在市場だ、である。

▼まず最初のひとつは、とにかく中国は広い。ほんとに広い。日本の国土の26倍だ。広さへの知識はあったが、それを身体で感じとった。疲労感はその後、抜けきったが、中国の広大さは体内に宿ったような感じがする。さらにいえば、この広さが中国の成長にどのように作用するのかといった疑問が、帰国後さらに肥大化している。日本の10倍という人口の規模に関しても同じだ。今後、中国のスケールと市場の成長性はどんな曲線を描くのだろうか。実に不確定な要素が多い。それゆえに興味は尽きない。つい先日、日本の女子ソフトボール・チームの北京オリンピック参加が決まった。すばらしいことだ。2008年はすぐそこにやってきている。

▼車はタクラマカン砂漠を走って、走って、走り回った。どんな車かというと、30人乗りのマイクロバスだ。りっぱな中国の国産車。乗り心地もいい。運転手は中国人。43歳。以前は軍隊でサッカーの選手であったという。軍隊で、サッカー選手というのも不思議に思ったが、そこはそれ、旅のあいまいさで話題を流し、たばこの回しのみで仲良くなった。親しくなったのは嬉しい限りだ。困ったことも起きた。休憩のたびに、「吸え、吸え」とすすめる。当方は禁煙して16年になる。食後にも「吸え、吸え」と肩を押し付ける。親しくなっておよそ10日間は、ヘビースモーカーになった。久しぶりに、タバコの旨さを味わった。

▼話を本筋に戻そう。運転手はとにかくパワーのあふれる冗談好きの陽気な“人民”なのである。人民という言葉には硬質な印象がある。運転手と、仲良くタバコを吸っていると、“人民”という言葉とはかけ離れた資本主義の現実を感じた。

 さて続きは次号です。(BCN社長・奥田喜久男)
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