旅の蜃気楼

人口減少を悲観するなかれ

2006/11/13 15:38

週刊BCN 2006年11月13日vol.1162掲載

【本郷発】総務省は10月31日、昨年10月1日に実施した5年ごとの国勢調査を発表した。その結果、日本の総人口は「1億2776万7994人」となった。前回調査の2000年10月に比較すると、約84万2000人の減少。日本の人口は確実に縮まっている。ここでいつも不思議に思うことがある。人口の問題に話が及ぶと、どういうわけか、常にマイナス面が強調されることだ。人口が減るとどんなマイナスがあるのか。プラスの面はないのか。東京で生活し、通勤ラッシュに揉まれると、人口減少を促進したい気持ちになるのはコラム子だけなのだろうか。お盆と正月になると東京の空は真っ青で、渋滞知らずでスイスイと移動できる。実に快適なのだ。

▼身近な人口問題と、国家レベルの人口問題をごちゃ混ぜにしてはいけないが、国家は私たち(人)で形成しているのだから、実に身近な問題なわけである。今の季節は紅葉の真っ盛りだ。山は中高年で溢れている。登山ブームだ。登山はアップダウンがあってつらい。生活習慣病を予防するための、メタボリックシンドローム対策にはもってこいだ。団塊世代が中心層の中高年が生活習慣病をなくすと、医療費の削減につながるから、健康保険料を負担している中高年の子供たちの負担が軽くなる。実にハッピーな循環ではないか。こうした循環を考えながら、人口問題に薀蓄を傾けたいものだ。

▼人口は国家のなかでどんな役割を果たしているのだろうか。隣国の中国では人口問題に国家の将来がかかっている、といっても過言ではない。吉川英治の三国志を読んでみよう。そこに描かれているのは古今東西に通じる国盗り物語だ。結果として、多くの人を味方につけた人が“天下人”となっている。今も昔も変わらない。“天下人”を動かすのは経済力、資金力である。人口減少の不安材料は経済力の低下だ。では不安材料を取り除けばいい。人口が減っても生産性を上げればいいわけだから、IT投資を増やし、高性能なロボット開発を促進すればいい。ここで“技術”の登場だ。「技術は市場を創造します。市場の成長は社会の原動力となります」。IT技術という実に身近なところで、人口減少を跳ね返すことができる。(BCN社長・奥田喜久男)
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