北斗七星

北斗七星 2007年11月5日付 Vol.1210

2007/11/05 15:38

週刊BCN 2007年11月05日vol.1210掲載

▼東京モーターショーが始まった。トヨタが世界トップをうかがい、日産が誇るスポーツカーNissanGT-Rが再登場するなど話題性は高いはずだが、このところ「東京」の地盤低下が目立つ。前年割れが続き、国内の新車販売台数はピークだった1990年度の6割という惨状だ。この10年で海外からの出展企業は100社以上も減少し、今年は米ビッグスリーのトップがひとりも会場に姿を見せない。欧米メーカーの関心は来月の上海に向けられているという。

▼環境問題などでクルマに対する社会の意識が変化するのはやむを得ないが、少し気になるデータがある。若者を対象にした日経リサーチの調査によると、「クルマはいらない。酒も飲まない。外出も控えて堅実・小規模なミニマムライフを好む」というのが20代の消費動向だという。クルマに関心があるとの答えは54%で、5年前に比べて21%も減っている。

▼実は需要の低迷が続くパソコン市場でも同様の傾向がある。需要の中心は40代で、逆に20代の落ち込みが激しい。背景に、若者の消費意欲そのものの減衰を指摘する声もある。破綻寸前の年金や硬直化した教育、政治などの問題を、そっくり次世代に回そうとしている社会そのものが、若者の活力を削ぐことになってはいないのか。意欲に満ちた若者がいなければ、日本はこぎ手のいない漂流船になりかねない。東京モーターショーの妙に空虚な会場に立つと、自動車産業の今の姿から、日本の危うい明日が見えてくる。
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