旅の蜃気楼

異国の“日常生活”に“非日常”を見る喜び

2008/02/25 15:38

週刊BCN 2008年02月25日vol.1224掲載

【本郷発】旅の魅力は何といっても“非日常”にある。飛行機のチケットと宿泊先だけを確保して、あとは好きなように旅先の街なかを歩いて異文化を味わう。観光ガイドを手にしてぶらぶらと歩く。見知らぬ土地ではスムーズに動けないので、うろうろするばかりで非効率だ。だが、非効率な旅ならでの楽しみもある。異文化の“日常生活”に身をおいて“非日常”に接する魅力を満喫できるからだ。

▼最近、周辺の人たちにイスラム文化圏を旅する人が増えている。2001年のNY911以来、イスラム圏の存在が地球上でクローズアップされたのも一因だろう。日本に住んでいるとイスラムの香りがしない。ところが、日本の奈良時代にかかわりが深く、中国の中部に位置するシルクロードの入り口の街・西安(かつての長安)ではイスラム教と仏教が混じりあって日常生活化している。なんとも不思議な光景が西安の裏通りにある。人種と宗教と言語が、また衣服、食べ物、住まい、香りといった五感が混じりあう、国と国の境の光景なのだ。ここには人が住み始めた頃からの融合と分離の活動が読みとれる。この世界こそ、時空を超えた異次元の世界だ。

▼こうした地域は、異文化でもさらに不思議な魅力を放っている。前号の本欄でその一端を紹介した『BCNランキングマガジン』編集部の清水隆哉記者も、イスタンブールで同じことを感じたようだ。イスタンブールを歩いていると、ヨーロッパのようなアラブのような、アラブのようなヨーロッパのような人種と言語と宗教が混じりあった不思議な世界だという。イスタンブールはキリスト教との境となるイスラム文化圏の最西端だ。西安はイスラム文化圏の最東端となる。ユーラシア大陸を東、中央アジア、西の欧州に分けると、仏教、儒教の東、イスラムの中央、キリスト教の西と大きく分布する。「雑然とした街の中に、いきなり壮麗なモスクが建っていたりして」と清水記者は記している。次週は彼の続編を読みたい。

▼イスラムといえば、都内・大塚を歩いていて突然、モスクに出会ったことがある。日本はここにきて西安化し始めているのか?(BCN社長・奥田喜久男)
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