北斗七星

北斗七星 2008年3月24日付 Vol.1228

2008/03/24 15:38

週刊BCN 2008年03月24日vol.1228掲載

▼今ではもう使われなくなった表現に、「○○のチベット」という言葉がある。僻地とか人跡未踏の地を表す場合に、こんな言い方をしたものだ。考えてみれば、チベットの人々に対してずいぶん失礼な話である。

▼最近、これに似たような言葉が登場してきている。IT・通信業界でよく見聞きする「ガラパゴス現象」がそれだ。絶海の孤島・ガラパゴスには、独自の生態系が保たれたままになっている。自分たちが生息する環境の外の世界では生きていけず、独自の進化を遂げた生物を、「特定のエリアだけでしか通用しないテクノロジー」になぞらえているわけだ。これも考えようによっては、不躾な言い方だ。しかし、ITや通信のみならず、日本のビジネスのあり方に照らしてみると、妙に説得力がある。

▼「ビジネスを制するのは、技術ではなくルールだ」という説を聞いたことがある。確かに、ルールの変更が日本経済に及ぼした影響はメガトン級ともいえる。時価会計、減損会計など国際会計基準なるものが矢継ぎ早に導入され、銀行や大企業の国際ランクが軒並みガクンと落ち込んだのは記憶に新しい。スポーツも同じ。お家芸だったスキーのジャンプ競技や柔道がルール改正のあおりを受け、勝てなくなってしまった。

▼残念ながら、日本(人)は国際的なルールの主導権を握るスキルに恵まれていない。そんなガラパゴスの生物が生き残るには、突出した独自技術を磨いて世界を追従させるしか道はないと思える。
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