北斗七星

北斗七星 2008年4月21日付 Vol.1232

2008/04/21 15:38

週刊BCN 2008年04月21日vol.1232掲載

▼株式市場の低落が止まらない。投資家からすると日本の競争原理が見えないというのが客観的な評価だろう。確かに国会の迷走ぶりを目の当たりにすると、ご説ごもっともと頷きたくもなる。が、本当にそうなのか。競争の現場に目を移すとまだまだ日本の強さが見えてくる。

▼シャープの亀山第二工場でその最前線を見た。第8世代の液晶テレビの製造ラインは、ほとんど公開されていない。タタミ三畳分という世界最大の液晶パネルを扱うため、組み立て装置、搬送用ロボットなどの大半の設備が独自の開発だ。

▼実はこの工場、最大のノウハウはその製造設備にあるのではない。開発した装置はいずれ海外に流失し陳腐化する。反面、最新の装置をどう組み合わせて最適化するかは、現場の試行錯誤の成果なので容易に真似はできない。そのため3次元の広大な製造ラインは無数の小さなブロックに仕切られブラックボックス化されている。ライン全体の配置図を知っているのは、4000人の従業員のなかのわずか数人。各工程の技術者に分散されているノウハウそのものが亀山の最大の資産だという。

▼この十数年、日本企業は人を含めたあらゆる側面で経営効率を追求してきた。しかし人口や資産の縮小という現実に直面している今こそ、立ち戻るべきは原点だろう。勤勉で創意に富む人の力は、日本の競争力の源泉だった。技術は陳腐化しても人の能力に限りはない。厳しい時代ほど、人の資産は活力の源泉となる。
  • 1