【東北発】ホームポジションという言葉がある。今回の東北の旅では、その言葉をしみじみ味わった。“三連休パス”というお得な切符をご存じですか? 料金はおとな2万6000円なり。お得かどうか試してみた。結果はかなりのお得感でした。11月22日、上野駅を早朝出発。目指すは秋田内陸縦貫鉄道の旅だ。

▼日本全国の鉄道をすべて乗ろうと思い立って、昭文社の鉄道マップを買ったのが1985年の暮れだ。以来、“鈍行”を基本にして機会をとらえては乗りに乗って、現在、およそ80%の線路にチェックを入れた。なかには廃線になった路線もあって、時代の流れを目の当たりにする。輸送機関は時代そのものだ。情報の伝送手段も同じように時代ごとに変遷する。流れに乗り遅れるという言葉がある。戒めなくてはならない。

▼さて、上野駅から快適に出発した。大宮を過ぎて程なくすると、遠くの山はうっすら白くなっている。郡山あたりからは冬の到来を感じさせる。仙台を過ぎると、本格的な雪山だ。盛岡から角館に向かう沿線は1か月前に秋田駒ケ岳に登るために来た時とは打って変わって、雪で真っ白だ。「かくのだてぇー」の車内放送に腰を上げる。ドアが開く。「こりゃ、寒い」。角館駅で12:01発の普通列車に乗り換え。お昼時だから、車内はがらんとしている。車窓に目をやると、真っ白な風景が通り過ぎてゆく。14:29、鷹巣駅着。次いで15:09発の特急かもしか4号で弘前に向かう。「ひろさきぃー」。ドアが開く。「寒い。こりゃ真冬だ」。夜は鍛冶町の居酒屋でご当地の『田酒』純米酒をやった。美味い。翌日、雪の弘前公園を散策する。もみじの落葉が追手門の土手を覆っている。その上に雪が積もり、「なんと、美しいことか」。公園を歩くと、雪化粧した岩木山が聳え立つのが見える。

▼23日は盛岡の夜を3軒ハシゴして、24日に「うえのぉー」。ドアが開く。「こりゃ、暖かいわ。こんなに違うんだ」。ここがいつもの環境だ。身体はホームポジションに慣れている。時代感覚、経済感覚にもホームポジションがある。秋田内陸縦貫鉄道の旅はさまざまな環境があることを実感させてくれた。(BCN社長・奥田喜久男)