【本郷発】山を歩く旅は、上りや下りがあって、くたびれる。登りが強い人と、下りが強い人がいる。私は下り。石の上をぽんぽん飛び跳ねていくのが楽しい。登りはひたすら耐えるのみ。どうして辛いことをするのか、毎回、自問自答の繰り返しだ。ところが、尾根に上がって周囲の山々を眺望すると、それまでの辛さを忘れる。山には技術を要するコースもあるが、大半は歩く体力と気力があれば、頂上を踏める。

▼このところ富士登山が大人気だ。中高年だけではなく、若い人も登る。登山が初めての人にも人気だ。富士浅間神社の宮司の話を聞く機会があった。「この時期は美味しい」と言っておられた。富士山は雪に覆われると、人を寄せ付けない。今、この時期が書き入れ時なわけだ。山に登るには装備がいる。最低限の装備は、登山靴、水筒、カッパ、行動食、地図、磁石、お金の七つ道具。衣食住――山ではこの基本を自覚させられる。歩くと汗をかき、休憩すると身体が冷える。この繰り返しだから、「衣」では汗の乾きのよい下着を着るのが基本だ。防寒対策も重要だ。山の気温は1000mで6℃下がる。3000mだと18℃。加えて、風が吹くと、風速1mで体温が1℃下がる。気温の変化を調節するのは「衣」だ。あとはホカロンとお湯という特効薬を持っていれば、万全だ。

▼食料を持って歩くには体力がいる。だから「食」は最低限。胃袋を小さくすることと、体力をつけることで対応できる。「住」はテント泊もしくは小屋泊。テントは重いが、体力があれば、行動スケジュールが自由になる。私の場合、長期の山歩きには小屋を利用する。「食」と「住」が揃うから、実にありがたい。アトピーに効力を発揮した高天原温泉の山旅では、三つの小屋に泊まった。街に近い順に、太郎平小屋、薬師沢小屋、高天原小屋だ。食事の美味しい順は、その逆。高天原小屋の夕食では、アザミのてんぷらが出た。うまかった。

 お出かけになったらいかがですか。紅葉が始まります。きれいですよ。