旅の蜃気楼

東京の下町に芸術の花咲く

2009/10/13 15:38

週刊BCN 2009年10月12日vol.1304掲載

【谷根千発】蓮池は“ツーン”とした独特の香りを漂わせている。久しぶりに上野不忍池を散歩した。下町風情を残す上野と、谷中・根津・千駄木地区では10月18日までの間、大きなエリアが一体となって、町ぐるみの催し物を開いている。開催地区は広い。蓮池の不忍池からJR上野駅に向かい、ここで乗車して鶯谷駅、日暮里駅、西日暮里駅まで足をのばす。この駅で下車して道潅山通りを山手線内側に向かって歩き、不忍通りにぶつかる。ここで左折して千駄木、根津、不忍池へと歩く。かなり大きなエリアだ。下町の匂いがぷんぷんとする。この一帯の44か所のポイントで、官民が一体となって『art-Link ueno-yanaka2009』を開いている。

▼イベントの一部を紹介する。科学博物館のインカ帝国のルーツの展示会、東京藝術大学の油画科の現在と美術資料、浄名院で開かれるヤナカヤガイ「無」、喫茶店「谷中ボッサ」の詩と音楽、裏路地の空き地にテントを張って物産を販売するアフリカの子供のためのチャリティーアートイベント。こんな形で、イベントはさまざまな規模、さまざまな組織、さまざまなグループの人たちの思いによって成り立っている。これが町おこしなんだと、感動する。

▼イベント会場は一枚の地図チラシに記してある。この裏表に44か所のイベント会場と、上野、谷根千地区で文化的な匂いを発信する店が4色カラーで印刷してある。その中のひとつに、往来堂書店がある。この書店には、立ち寄ると必ず本を買ってしまう“誘惑”が待ち構えている。アマゾンでは味わえない空気がある。まずはカウンターに置いてある『往来っ子新聞』を手に取る。9月29日発行、通巻第16号。A4判両面印刷。新聞の割付で、発行人は笈入建志さん。創刊号のトップ記事の見出しは「大不況には本を読む」だった。谷根千の裏路地には、若い感覚のお店がどんどん増え続けている。古い町に明日の匂いがします。旨い蕎麦屋店もあります。探してみてください。(BCN社長・奥田喜久男)

“魅惑”の書店が発行するコミュニティ新聞
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