北斗七星

北斗七星 2010年4月12日付 Vol.1329

2010/04/15 15:38

週刊BCN 2010年04月12日vol.1329掲載

▼中国の都市部にある銀行の入口付近には、大量の外国紙幣を指で挟んだ怪しい人物がうろついている。見るからに、行員とは異なる風体だ。その傍を通ると、「外国紙幣を高く両替するよ」と日本語で囁く。1円=12元の頃、15元で交換してくれた。“政府公認”かどうかは不明だが、他に仕事をもたず、為替レート変動の隙間で儲けることをなりわいとしているのだ。

▼これは昨年夏の出来事だった。リーマン・ショック以降の世界的な大不況の最中、その人物は片言の日本語で世相を読んだ。「日本経済はあと1年で回復する。円は買われる」。この後、日本の製造業がずたずたな状況下で円が買われ、「円高」が進行した。このほど、日銀は国内景気が「幾分上振れ気味」と、短観を基に日本経済の持ち直しを示した。特殊な事情はあったものの、この人物の予想は、ずばり的中したわけだ。

▼中国はいまや、世界最大の外貨準備を抱え、世界最大の輸出国でもある。米財務省はこの中国を標的として、人民元の切り上げ圧力を加えている。経済の実力に応じて人民元を切り上げなければ、世界経済の不均衡が生じるためだ。日本の製造業は、内需から中国中心の外需指向になっている。人民元の上昇は、輸出採算を改善する。

▼そうなれば、日本経済は急速に回復する。他国の事情に頼るのは忸怩たるものがあるが、内需が期待薄の状況では、やむを得ない。中国の動向を見ずして、日本経済の行方を測ることが難しくなっている。
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