【中国・上海発】日本経済に沈滞ムードが漂うなかで、製造業を中心とする国内企業の多くが新たな販路を求めて新興国、とくに中国市場へと進出している。これに伴って、日系企業が相次ぎ中国に現地法人を設立。一説にはその進出企業数は、2万~2万5000社といわれている。日本の多くのITベンダーは、ここに活路を見出し、伸び悩む日本IT市場の減少分を補填するために事業を強化している。進出した各ITベンダーは当面、日系企業を相手にするが、中国でのさらなる市場拡大を目指し、虎視眈々と中国ローカル企業への製品・サービス提供の機会を狙っている。現地の最近の様子を取材した。
加速する日本の製造業進出
クオリティ、自社製品を4倍に伸ばす 現地取材した記者が降り立ったのは「春節(旧正月)」明けの3月上旬、経済発展著しい中国・上海市だ。緯度は日本の鹿児島と同じだが、「亜熱帯湿潤季節風気候」で、東京とほぼ同じ気温。現地の盛り上がりはいまひとつというが、5月に開催を控える「上海万博」の準備が急ピッチで進む。街中には、万博のマスコット「海宝(HAIBAO)」があちらこちらに飾られ、市民の参加ムードを煽っていた。

現地チャネル向けイベントで、1年間でビジネスを4倍に拡大すると掲げたクオリティ(講演者は浦聖治社長)
実質的に中国経済の2010年が動き出すこの時期を狙って、セキュリティとIT資産管理ソフトウェアを主力製品にもつクオリティ(浦聖治社長)は3月5日、ビジネスパートナーミーティング「クオリティソフトVision2010上海」を開催。同社は02年10月、上海現地法人「闊利達軟件(上海)有限公司」を設立し、06年4月から製品出荷を開始した。現在、IT資産管理ツール「QND Plus」などが5000ライセンス(60社)程度、導入されている。
クオリティ製品の中国導入先の9割を日系企業が占めているため、このミーティングには中国に進出している日本のITベンダーを中心に関係者約20人が参加。中国市場を活性化するためには「パートナーの協力が不可欠」(浦社長)と、同社チャネル制度への協力を求めた。さらに、現地法人の飯島邦夫・総経理(社長)は「中国日系企業のパソコン管理市場でNo.1になる」と述べ、今年1年間(2010年1~12月)でライセンス販売数を現在の4倍(2万ライセンス)にすると宣言。日系企業向けだけで、これだけの市場拡大を見込むほど、中国市場の勢いは「爆発的だ」(浦社長)と、大きな期待を寄せている。

上海万博開催に向け、近代的なビルが次々建設される上海市内
この目標値を具現化するためには、新たに「代理店へのインセンティブ提供」や「1次代理店に2次代理店の紹介」「認定技術者制度」などを開始するという。具体的には、中国内向けの2次代理店と地域代理店でパートナー10社の開拓を目指す方針だ。飯島総経理は「中国市場が元気になれば、私たちも、そして日本のITベンダーも元気になる」と述べ、まずは日系企業向けに土台をつくって将来的には中国ローカル企業への製品提供を拡大する方針だ。同社は、「将来的には本社を上海に移す」(飯島総経理)とまで言及している。
日系向け中心も、ローカルへ波及も  |
| 大塚商会の中国法人「欧智・信息系統商貿(上海)有限公司」の岩宮宏・董事長兼総経理 |
クオリティと日系企業向けIT資産管理ツールとして「『QNDα中国仕向け特別版」を共同開発した大塚商会(大塚裕司社長)は、03年4月に現地法人「欧智・信息系統商貿(上海)有限公司」を設立している。同社は、CADを販促するの現地法人として立ち上げた。現在は、日本本社と同じくコピー、複合機、FAX、サーバーなどのITシステムを全般を提供している。
同社の場合は、「一般的に料金が未回収になるケースが多いといわれている」(岩宮宏・董事長兼総経理=会長兼社長)ため、中国ローカル向けでなく、100%が日系企業向けだ。IT機器の調達は、すべてメーカーの中国現地子会社から直接仕入れ、中国で組み立てて提供。保守・サポートも、日本に所在する企業向けと同じ品質で提供しているという。
以前は、メーカーの流通卸である中国ローカルの代理店から仕入れた実績もある。しかし、知らぬ間に不正コピー版のOSやOffice製品などが搭載されている可能性があったことから、メーカーの現地法人と直取引をしている。中国政府が不正使用の摘発を強化し、だいぶ改善されたものの、日本の某ITベンダーによれば「純正品が入っているのは1割程度」と、現地ローカルの代理店に任せる危険性を指摘する。それでも、「日系企業だけでも、伸び率は日本市場と比較にならないほど高い。日本と同じくクラウド/SaaSや仮想化の波が訪れている」(同)と、日本本社で展開する製品・サービスと連携して、新たな顧客のパイの獲得に自信を深めている。
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| サンワサプライの中国法人「山業(上海)商貿有限公司」の山田祐三・董事長兼総経理 |
一方、ビジネス向けとコンシューマ向けの両面で、中国市場を拡大しようとしているのがIT機器メーカーのサンワサプライだ。同社は、07年4月に現地法人「山業(上海)商貿有限公司」を設立。ベストバイをはじめとする中国内の家電量販店や百貨店、スーパーなど300店舗と通販サイトで自社のIT製品を販売している。中国ローカル企業向けには、「基本的に案件ベースで対応している」と、現地法人の山田祐三・董事長兼総経理は話す。
同社の場合は、7~8割が量販店との直取引で、安全策を講じている。ただ、直取引できない量販店に対しては、中国ローカルのディーラーを挟み、入金があったと同時に出荷することにしている。山田・董事長兼総経理は「それでも、日本国内の内需が減退するなか、中国市場への期待は大きくなっている」と語る。ただ、最近では、中国市場を手中に入れている韓国のITメーカーに加え、「中国メーカーも力をつけてきた」(同)と、警戒感を強めている。
デジタル家電を除く、中国の日系企業向けIT市場は、すでに日本国内のそれに比べて5%弱までに拡大しているといわれる。製造業を中心とする日系企業の中国進出は加速しており、ここに日本と同じシステムで提供する需要はありそうだ。中国ローカル企業への日本製品・サービス提供は、その先に見えてこよう。(取材/文●谷畑良胤)

上海万博開催に向け、近代的なビルが次々建設される上海市内の量販店密集地域「徐家匯」にある量販店の看板には、韓国対日本が“演出”されている