BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか─あるITリーダーの冒険』

2010/07/01 15:27

週刊BCN 2010年06月28日vol.1339掲載

 物語の舞台は金融サービス業を手がけるIVK社、主人公はローン・オペレーション部門の責任者を務めるジム・バートンである。ジムはある日、IVK社の立て直しにやってきた新CEOのカール・ウィリアムに呼び出された。そのカールの口から飛び出したのは、ジムが予想もしなかった言葉だった。「君を新たなチーフ・インフォメーション・オフィサー(CIO)に決定した」。

 中枢部門のリーダーとしてチームを引っ張ってきたジムだが、ITに関してはまったくの素人。むしろ、IT部門にあれこれと注文をつける立場だった。それが、よりによってCIOとは…。ここから、ジムの苦悩の日々が始まる。

 IT部門は、これまで彼が率いてきたセクションとは勝手が違う。まず、チームプレーという概念がない。“隣は何をする人ぞ”の技術者集団をまとめていくことから手をつけていった。古参のエンジニアを味方につけて、教えを請う形で勉強を重ねたのだった。

 苦難の坂道を一歩ずつ進むジムに、さらに試練が襲いかかる。外部からのシステム攻撃だ。修復に追われる一方で、アナリストミーティングでこの事実を情報開示すべきかどうかについてCEOと意見が対立する――。そして、どうなったか。ストーリーは、意外な展開で結末をみる。

 小説仕立てだが、内容は現実に即しているので、一読すればCIOという職務の本質が理解できる。ITベンダーの立場で読んでも興味深い本である。(止水)


『ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか─あるITリーダーの冒険』
ロバート・オースティン/リチャード・ノーラン/シャノン・オドンネル 共著 淀川高喜 訳 日経BP社刊(2000円+税)
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