旅の蜃気楼

山行で“ご飯”の力を思い知る

2010/10/21 15:38

週刊BCN 2010年10月18日vol.1354掲載

【南アルプス発】天気の悪い三連休であった。土曜と日曜日が雨。打って変わって、月曜日は晴天。とんでもなく空の青い、素晴らしい秋晴れだ。こんな日に下山とは何とも口惜しい。10月10日の南アルプスは夜明け頃までは雨が落ちていたが、8時頃には落ち着いてきた。朝食をとって、9時過ぎに駒仙小屋のテン場を出た。目指すは仙丈ヶ岳だ。今年に入って、2回、頂上を踏めない山行が続いた。まったく、意気地なしとしかいいようがない。歩き始めて2時間を過ぎると、へたってしまうのだ。ほんとに情けない。今回は気合いを入れて臨んだ。とにかく登る。頂上を踏む。

▼雨の降った山は、地面が濡れていて滑りやすい。だから、意識を集中して登る。私は雨の山行が好きだ。集中力が出始めてくるのを、体で感じ始める瞬間がたまらない。一番緊張する山行は事故った時だが、これは一度しかない。次に緊張するのは難度の高いルートをたどる時。難度が高くて初めてのルートは口の中が乾くほどだ。アドレナリンがドッと吹き出すのが分かる。落ち着くまではどうにも身体が他人のようだ。少し落ち着き始めると、気分だけ高揚して、腰が落ち着いてくる。こうなれば集中力が出てしめたものだが、一にも二にも訓練の賜だ。

▼幸か不幸か、仙丈ヶ岳は曇り空で合羽を着ることはなかった。登り詰める間に考えた。なぜ前回は2回とも敗退したのか。その原因は、ダイエットにあるのではないかとの思いが頭に浮かんだ。前の2回は、2時間が過ぎるとガス欠状態になったが、ちょうどダイエットの期間中だったからだ。このところ、お酒の頂きすぎで少し体重がオーバーしたので、雑誌『ダンチュウ』で読んだ米断ちダイエットに挑戦した。60日間、ご飯と米製品を口にしないという方法だ。大好きな日本酒をやめて、嫌いだった焼酎にした(おかげで芋焼酎がうまいのに気づいた)。結果、8キロの減量に成功した。その代わり、途中でガス欠だ。このことを知っていれば驚かない。無事、仙丈ヶ岳の頂上を踏んだ。ご飯の力を思い知った、ありがたい三連休でした。(BCN社長・奥田喜久男)

三度目のアタックで、ようやく念願の頂上にたどりついた
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