BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「日本脳」改造講座』

2011/01/06 15:27

週刊BCN 2011年01月03日vol.1364掲載

 われわれ日本人は、「日本脳」という独特の脳ミソをもっているらしい。ただの一度も異民族や外国に侵略されたことのない日本という国の民は、特殊な脳構造、すなわち思考法を身につけた――というのが、著者の見方だ。

 では、「日本脳」とはどんなものなのか。端的にいえば、「イエス&ノー」が日本脳であり、対して欧米脳は「イエスorノー」の世界だという。日本人はイエスかノーかをはっきりいわず、まず相手の言い分を聞く。そして、全面的にではないが、一応それを受け入れる。反論はその後に、という図式だ。別の表現をすれば、自己主張が過ぎるのはみっともないという感覚でもある。

 日本脳と欧米脳がぶつかれば、勝負はみえている。経済のグローバル化が急速に進んでいくなかで、日本が復権するには、どうすべきか。著者はその方策として、ディベート力の向上、英語力の向上、エリート教育の必要性などを挙げる。それぞれについて、“榊原流スキル”が述べられており、説得力がある。

 とくに興味深いのは、日本脳と欧米脳のほかに中国脳やアジア脳があり、それらをきちんと理解すべきという提言だ。明治時代、日本は「脱亜入欧」を金科玉条としてきたが、日本経済の再生には「脱欧入亜」こそがキーワードになるというのである。

 著者は、けっして日本脳を否定しているのではない。その優位性を生かしつつ、限界を知ったうえで行動することが、自らを助ける道であると説いている。(止水)


『「日本脳」改造講座』
榊原英資 著 祥伝社刊(1400円+税)
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