【ラオカイ発】かつて、素朴な疑問を感じたことがある。ボーダー(国境)とはどんな所なのか、である。日本列島のボーダーは、海だ。まだ行ったことはないが、対馬から西を望むと韓国が見えるという。やはりボーダーは海なのだ。素朴な疑問をもつきっかけとなったのは、韓国の友人に38度線の話を聞いたことだった。写真や映像で見聞きしてはいるが、隣接した国のボーダーに興味を抱いた。

▼故人だが、ガブリエル中森という軍事評論家に、「中国とベトナムの国境とはどんな所ですか」と尋ねたことがある。彼はベトナム戦争以来、20年ほどその地域で活躍した経歴をもっている。ふと情景を思い出す表情を浮かべながら、「ボーダーかい。何もないよ」と答えた。どうにも腑に落ちない自分を感じながら、その場は終わった。

▼中国に通い始め、現地の友人ができて、少し深い話をする機会が生まれた。あるとき友人は、「陸上で14か国と隣接した国と、海に囲まれた国とは違う」と言った。こちらもそうは思う。では何が違うのかとなると、お互いに答えがはっきりしない。納得のいく答えを見つけようと、話しあうごとに、お互いに国境の相違点の理解を深めている。

▼百聞は一見にしかず。5月4日、ベトナムのボーダーの街・ラオカイから中国のボーダーの街・河口(フーコー)を望んだ。幅およそ150mの川の中央がボーダーだ。おーいと叫べば、返事が返ってくるほどである。ラオカイの人口は10万人、立派な街だ。ハノイから230kmの山間に入った街とは思えない存在感。対岸の河口も見るからに存在感がある街だ。鉄道で中国を北上すると雲南省の昆明市につながる。ここにには立派なゴルフ場もあるという。ボーダーについての話は、中国の長~い国境と同じように、延々と続きそうである。(BCN社長・奥田喜久男)

ベトナムのラオカイから中国の河口(フーコー)を望む。大声で叫べば会話ができそうな近さだ