旅の蜃気楼

国境の街で感じた国力の違い

2011/06/23 15:38

週刊BCN 2011年06月20日vol.1387掲載

【憑祥市発】ランソンを通り抜けて国境の街、ドンダンに入る。ここから中国に入国した。思わず、「おっ!」という声が口から漏れ出る。道が広い。整備されている。ここは中国とベトナムの国境の街のはずだ。それが日本の高速道路のようなのだ。クルマはぐんぐん速度を上げる。バウンドすることなく快適に走る。ビルが見えてきた。国境に一番近い街、憑祥(ピンシャン)市に入る。人口10万の都市だ。小さな街のはずなのに、目の前には近代都市がある。

▼街の中には疎水がある。その流れに沿って舗道が続いている。街路樹とベンチがあって、あちこちで、中高年の人が憩っている。カラオケ大会が始まっている。将棋をさしている。日によってはダンス大会もあるらしい。近くのショッピングセンターに足を延ばす。ベトナムの人に向けた店が並んでいる。ここにはモノが溢れている。ボーダーを越えて、家族総出でショッピングを楽しんで、帰る。そんな光景が目に浮かぶ。

▼1、2時間、この街を散策する。すると、実はこぢんまりした街であることに気づく。「小さいけれど、きれいな街だ。ベトナムはすぐ近くなのに」。街並みが実に整然としている。何がそうさせているのだろうか。国の違いだ。国の違いは政策の違いだ。国の政策は人々の生活に多大な影響力を与える。事実を目の当たりにすると、新鮮な驚きに包まれる。

▼同じ道を通ってベトナムに帰った。田園風景を見ながらハノイの都心に入る。クルマが多い。オートバイの集団が唸りながら疾走する。ビルが大きくなってきた。どうにも整然とは縁遠い街だが、やはりここは都会だ。ボーダーを跨いで感じたことは、国は人がつくるということを改めて確信したことだ。人の意(おもい)とはとても大切だ。(BCN社長・奥田喜久男)

タクシーの車内から見た憑祥市の街並み。整然としてきれいだ
  • 1

関連記事

思わぬつまずきも旅の楽しみ

大陸の国境は日本とどう違うのか

ベトナムの通貨に頭が混乱

おっかなびっくり、ラオカイへ