BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>幸福の習慣

2011/12/15 15:27

週刊BCN 2011年12月12日vol.1411掲載

 「国民総幸福量」の増大を国是とする国の王と王妃は、日本中に何となくほんわかした空気を振りまいて帰国していった。各地を訪れるお二人の姿を目にして、多くの人が温かい笑みを浮かべていた。

 本書は、米国の調査会社ギャラップが、人間の幸福を「仕事」「人間関係」「経済」「身体」「地域社会」の五つの要素に規定したうえで、世界150か国で調査を実施し、さらにハイスコアを記録した個人にインタビューを行って、幸福になるための「習慣」を抽出した一冊。いわば、幸福の最大公約数を具体的行動指針に落としたテキストである。

 各要素に三項目ずつ挙げられた「習慣」自体は、決して目新しいものではない。例えば「地域社会」。インタビューからは、「自分の強みや人生の目標に照らし合わせて貢献の仕方を考える」「自分の思いや興味関心を周囲に伝える」「地域社会の活動に積極的に参加する」が抽出された。暮らしやすい地域をつくるには自らの参加が必要、としながら、利他的行動の効用を説いている。肝心なのは、これらの「習慣」が、自分が幸福だと考えている人から導き出されたという点だ。

 「幸福をもたらす行為は善」とした功利主義の祖、ジェレミ・ベンサムは、個人の幸福の最大化が社会を幸福にするとして、「最大多数個人の最大幸福」を説いた。五つの「要素」×三つの「習慣」は、社会の幸福を目指す初めの一歩となる。調査対象国から漏れているブータンには、どんな習慣があるのだろう。(叢虎)


『幸福の習慣 世界150カ国調査でわかった 人生を価値あるものにする5つの要素』
トム・ラス/ジム・ハーター 著 森川里美 訳 ディスカバー・トゥエンティワン 刊
(1600円+税)
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