スティーブ・ジョブズが亡くなって、はや4か月。この間、カリスマの足跡をたどり、その言葉に込められた意味を考え、生み出したプロダクトが社会に与えた影響を記した書籍は雨後の筍のように書店の棚に並び、一部はベストセラーリストに載った。その最後発のなかに入るであろうこの200ページたらずの新書は、その薄さとは裏腹に、これらの書籍の精華といっていい。読者は、失ったものの大きさを知ると同時に、神格化されたジョブズとは別の彼を理解し、本質に迫ることができる。

 ITジャーナリストの著者は、日本で有数の「アップル・ウォッチャー」として知られている。もちろん、これまで数々のアップル、ジョブズの書籍をものにしてきた。著者のみたアップルは、ビジョンから「革新」を生みだし、人々の暮らしを変える「文化」を築いてきた会社だ。最強のチームが議論を重ね、妥協せずに「シンプル」を追求して製品を磨き抜くからこそ、文化となる。定着のプロセスは、製品のコンセプトを広める1年目、爆発的な需要を獲得する2年目、そして新たな製品を発売する3年目には、他社をマーケティングに巻き込んで販売に安定感をもたせ、新たなチャレンジを始める。このサイクルのなかで、ジョブズはユーザー、つまり市場と対話しながら、常に直感で本質的なものを選択してきた。最後に示される「イノベーションの王道」12のステップは、極めてシンプルだ。

 タイトルと著者を見て、すぐさま手に取って正解。ただし、書籍としての洗練を期待してはいけない。(叢虎)


『ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した』
林 信行 著 青春出版社 刊(829円+税)