旅の蜃気楼

津軽の地吹雪を見に弘前へ

2012/03/01 15:38

週刊BCN 2012年02月27日vol.1421掲載

【弘前発】「はーるよこい、はーやくこい」。春は光に乗ってやってくる。日溜まりは猫の気分だ。ところが、突然、家人が津軽の地吹雪を体験したいと言い出すものだから、急遽、弘前を目指すことになった。

▼2月18日、8時50分羽田発、能代弘前空港行き。雪のため欠航となっている。困ったぞ。でも、行けるところまで行ってみよう。11時05分羽田発、秋田空港行きに変更。天候判断は飛ぶ1時間前だ。お茶を飲みながら待つ。10時20分に飛ぶことになった。

▼東京は快晴なのに「秋田空港の上空は雪雲に覆われています。状況によっては羽田に戻ることがあります」と機内アナウンス。秋田空港では着陸を試みるも滑走路が見えないので、上空で待機の旋回。二度目で滑走路に向かう。「ガッツン」と車輪が雪の滑走路に着地したとたんに、風圧で粉雪が飛び散って、窓は真っ白。それが落ち着くと。遠くの樹木が微かに見える。白銀の世界だ。

▼秋田駅から奥羽本線で弘前に向かう。「雪のため、遅れています」。周りの乗客は「いつものことだぁ」と平然としている。あわただしく電話している人もいるが、その場の雰囲気から浮いている。

▼弘前の夜の街に出た。弥三郎という小料理屋に入った。「どこから来たの?」「東京です」「東京でも雪が降ったみたいね」。ここまでは普通の会話が続いたが、女将が口を挟んだ。「東京に雪が降ったというのがNHKのニュースで最初に映るじゃない。車がよろよろ走る映像が流れてさ。その時、私たち雪国の人間は、少しイラッとすんのよ。最初のニュースで流すことがほかにないのかって、ね」。女将の話があまり面白いので深酒をしてしまった。翌日、五能線経由で上野に帰着。週末は、「光の春」を感じた。もうすぐ春だ。(BCN社長・奥田喜久男)

五能線は三味線でのおもてなしが名物だ
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