BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『なぜ風が吹くと電車は止まるのか 鉄道と自然災害』

2012/09/20 15:27

週刊BCN 2012年09月17日vol.1448掲載

 風が吹けば桶屋は儲からないかもしれないが、電車はよく止まる。風に弱いことで定評のあるJR京葉線(東京─蘇我間)を利用して通勤する身には、運休は切実な問題だ。

 自然災害が及ぼした鉄道へのダメージといえば、2011年3月11日の東日本大震災が最大級とみて間違いない。首都圏では、あきらめて会社や集会所に泊まり込んだ帰宅困難者が大量に発生した。

 こうした大災害とは別に、首都圏のJR東日本を利用する人たちは、近年、電車がよく止まるようになったと感じておられるのではないか。運休の原因の多くは風らしい。とはいえ、21世紀になって急に風が強くなったわけではない。鉄道会社の風に対する基準が厳しくなったのだ。従来は、JR東日本の沿線に設置されている風速計が毎秒25mを指せば時速25kmでの徐行、風速30mなら運転見合わせとされていたが、2006年1月19日からは、風速毎秒20mで徐行、25mで運転中止と改められた。この結果、“風が吹けば電車が止まる”アクシデントが頻発することになったわけだ。

 原発事故の後、首都圏では間引き運転が行われたが、電力不足になると、快速や特急が運休になって、各駅停車ばかりになる。なぜなのか。通過主体の列車はカーブでの減速や再加速に意外と電力を食うのに対して、各駅停車は一度加速すれば惰性で次の駅まで着いてしまうかららしい。

 電車が止まる理由や構造を知っておけば、待たされてイライラする気分が少しは和らぐかもしれない。(仁多)

『なぜ風が吹くと電車は止まるのか 鉄道と自然災害』
梅原 淳 著 PHP研究所 刊(780円+税)
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