▼記憶に残る日付がある。3.11は昨年の東日本大震災だ。5.18は1980年の光州事件。9.11は2001年のニューヨークで、事件の現場に居合わせた。私的な出来事では1.11だ。それは母親の死で、人生の原点回帰はこの日だともいえる。

▼9.15は2008年のリーマン・ショックだ。景気はその日から急速に冷え込んだ。企業は苦悶し、構造を変えながら、未来を指向し始めた。私たちBCNも、明日の市場成長を期待して「日中韓に土俵を拡げる」を長期ビジョンに掲げた。2010年3月のことだ。以来、中国をくまなく歩き続けて数々の街を訪ね、数多くの日系人と中国人に出会って新しく日付を覚えた。

▼9.18はとくに印象深い日付だ。昨年、大連の夏季ダボス会議に出かけた時のこと。9月18日の朝、港に停泊する船が一斉に汽笛を鳴らし始めた。柳条湖事件、つまり満州事変の発端となる事件の日だったのだ。中国では、毎年、儀式が執り行われて、全土の人々が抗日の意識を記憶に刻んでいる。日中交流はこうした基盤のうえに成り立っている。その前提に立って、確かな意志をもって大地を踏もう。（直）