BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場』

2012/12/06 15:27

週刊BCN 2012年12月03日vol.1459掲載

 2011年3月11日の東日本大震災で、企業が行った「無私の支援」や「利他の経営判断」の事例を集めた一冊。取り上げているのは、物流活動の支援や、宅急便1個につき10円の寄付で2011年度だけで140億円の寄付を実現したヤマトホールディングス、津波で海水をかぶった写真を洗浄する技術を開発し、大規模な洗浄ボランティア活動を展開した富士フイルム、被災地域にパソコンやクラウドシステムを提供して、NPOと連携して支援活動を行った富士通、被災直後から本人確認だけで現金払い戻し業務を行い、被災者の避難先にある銀行とも協力関係を構築した福島の東邦銀行など、7社・団体だ。

 筆者たちは、これらの活動が一過性の報道だけですぐに忘れ去られることをよしとせず、ストック情報として後世に伝えられるべきだと考えて取材を開始。震災直後の様子から支援を決定する経営トップの判断、そして実際の活動の模様まで、企業・団体の各階層へのインタビューを通じて、そのプロセスを明らかにしている。

 取材対象の支援活動に共通するのは、支援のそもそもの発想が現場から上がったものであること。緊急時に何が必要とされるか、自分たちにできることは何かを、ほとんど本能レベルで捉え、自ら動き出している。そしてもう一つ、すべての活動が企業・団体自身に大きな求心力──帰属意識ややりがい、使命感──を生んでいる。

 当時の状況を思い出しながらページをめくるので胸の詰まる思いもするが、それは読み手の勝手な心の揺れというもの。活動の描き方は冷静だ。(叢虎)


『日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場』
グロービス経営大学院/田久保 善彦 著
光文社 刊(740円+税)
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