BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本をダメにしたB層の研究』

2013/01/10 15:27

週刊BCN 2013年01月07日vol.1463掲載

 「B層」とは、2005年9月のいわゆる郵政選挙の際に、小泉純一郎首相率いる自由民主党が広告代理店につくらせた企画書「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」で使われた用語。国民を「IQ」と「構造改革」の2軸でABCDの層に分けたうちの一つで、小泉内閣の支持基盤とされた層である。「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」と定義づけられたこのB層に向けて、小泉首相は問題を単純化した「改革なくして成長なし」「聖域なき構造改革」というワンフレーズ・ポリティクスで訴えかけ、大勝利を収めた。その後、日本という国がどうなったか、われわれはもう知っているわけであるが。

 B層の特徴として著者が挙げるのは、「平等主義や民主主義、普遍的人権など、近代的諸価値を盲信する」一方で、歴史によって培われた「良識、日常生活のしきたり、中間知、教養を軽視する」という姿勢。権威を嫌いながら権威に弱く、キーワードに流され、後々だまされたといって怒るのだが、それでも永遠にだまされ続ける。そして、だまされながらも社会を動かす力をもつ。今回の選挙で自民党・安倍晋三総裁が勝利の夜に見せた無愛想な顔は、自民党が勝ったわけではなく、民主党が負けた、つまりB層の怒りが民主党に向いたということを一番よく理解していたことを物語っている。もちろん本書の発行は選挙前、解散風さえ吹いていなかった10月である。巻末の「B層おバカ年表」は、さながら政治家失言録のよう。今回の選挙結果と照らしながら読むと味わい深い。(叢虎)


『日本をダメにしたB層の研究』
適菜 収 著
講談社 刊(1300円+税)
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