企業が新たなIT製品・技術を導入する際、これまでは情報システム部門が意思決定の中心を担ってきました。しかしいま、それが変わりつつあります。ITの専門家ではなく、経営層や営業、マーケティングなど、ITを使いこなす部門の声がより重視されるようになってきているのです。すでにITベンダーからは、「ハイタッチ営業の対象が変わった」という声も聞こえてきます。
au損害保険がエバーノートの「Evernote Business」を導入したプロセスにも、まさにこうした構図がぴたりと当てはまります。主導したのは、マーケティングを担当する営業企画部でした。
「Evernote」は、もともとメモ機能が充実したコンシューマ向けのオンラインストレージ・アプリケーションで、かつて営業企画部のトップだった柳保幸専務取締役も、個人的に愛用していました。これが、結果的にビジネス版の採用を強力に後押しすることになりました。それも、情報システム部門の反対を押し切るかたちで、です。
エバーノートの井上健ゼネラルマネージャーは、「柳専務に営業活動をしてもらったようなもの」と冗談交じりに話していましたが、ITベンダーにとっては示唆に富んだ事例でしょう。導入するITの価値はユーザーが決める。よく考えればあたりまえのことですが、こうした動きが市場で大きな潮流になりつつあります。(本多和幸)
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<THE決断!ユーザーのIT導入プロセスを追う>リアルタイムで情報共有 商材開発、システム整備をスムーズにメールマガジン「Daily BCN Bizline 2013.6.11」より