BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『里山資本主義』

2013/09/12 15:27

週刊BCN 2013年09月09日vol.1496掲載

 ロシアから天然ガスの供給を受けているオーストリアは、おおもとのパイプラインの栓一つで生殺与奪の権を握られてきた。そして、チェルノブイリの原発事故。オーストリアは国是として「脱原発」「打倒! 化石燃料」を掲げて、それを実現してきた稀有な国である。この国の熱源は、製材工場でつくる木材ペレットだ。各種の工場はもとより、一般家庭にもペレットボイラーが設置されていて、巡回するタンクローリーがペレットを運ぶ。国を挙げての自給自足サイクルが成り立っているのだ。

 日本にも同様の地方都市がある。岡山県真庭市。中国山地の山あいにある町だ。人口5万、面積の8割を山林が占める。昔から林業が盛んなところだが、近年は輸入材に押されて衰退の一途をたどっている。そこに新たな鉱脈を掘り当てたのは、地元の建材メーカーだった。従来は産業廃棄物として有償で処分してもらっていた製材くずを宝に変えたのだ。木くずを燃料とする「木質バイオマス発電」によって、一般家庭2000世帯分の電力を賄っているという。

 「大都市につながれ、吸い取られる対象としての『地域』と決別し、地域内で完結できるものは完結させようという運動が、里山資本主義なのである」。「生産年齢人口」が経済の動向を左右するという論旨のベストセラー、『デフレの正体』の著者・藻谷浩介氏と、NHK広島取材班がタッグを組んで「里山資本主義」という言葉を生み出し、1年半をかけて取材して得た成果が集大成されている。(仁多)


『里山資本主義』
──日本経済は「安心の原理」で動く
藻谷浩介/NHK広島取材班 著
角川書店 刊(781円+税)
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