今日のひとことWeb版

ドイツとアメリカ、そして日本

2013/12/03 15:26

 外資系企業といえば、経営者、従業員とも、成果を出せば高額の報酬を得ることができ、失敗すれば簡単にクビになるというイメージが一般的。ITの世界ももちろん例外ではなく、国産のITベンダーに比べて人の入れ替わりが激しいのは確かです。

 雇用の流動性を高めるべきか否かという議論は横に置いても、長らく終身雇用を前提としてきた日本社会では、そうした企業に対するアレルギーのようなものはまだ根強く存在します。外資系企業からみると、「日本のそういうところが世界から置いていかれる原因なのに」と思われているのかもしれません。

 ドイツでは、先頃、SAPを巡るセンセーショナルな報道があり、ビジネスソフトウェア市場に激震が走りました。結局、報道の内容は真実とはいえなかったのですが、発端は、SAP社内でのドラスティックな組織改革と人事異動のようです。つまり、これに不満をもつ誰かが偏った内容をリークしたのかもしれないということです。

 「ドイツ人やドイツの企業は、米シリコンバレーのIT企業とは感覚がまったく違う。雇用や組織に対する考え方は、むしろ日本に近いかもしれない」とは、SAPジャパン関係者の弁。ERP市場でぶっちぎりのトップベンダーの社内風土としては意外でしたが、今回の報道には、そういった事情も関係していたのでしょうか。

 こうしたしがらみを乗り越えながら断行しなければならない改革というのも、もちろん存在します。一方で、地域性や文化、働く人のメンタルを無視した「グローバル経営」は成り立たない。そのバランスをどこに求めるかというのは、日本だけでなく、世界中の企業の課題です。(本多和幸)

【記事はこちら】
独SAP 「Business ByDesign開発中止」報道の影響 より明確になったクラウド戦略
メールマガジン「Daily BCN Bizline 2013.12.3」より
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