書店で育児書のコーナーへ行くと、実にいろいろな主張の本が並んでいます。一時期は、子供の能力を伸ばすため「ほめて育てる」、という考え方がもてはやされたようですが、最近はその反動のように、「ちゃんと叱る」方法を説く本も少なくありません。タイトルだけを眺めると、「ほめる」派と「叱る」派の対立のようにもみえますが、実際に中身を読んで総合すると、「ほめるべきところはほめ、叱るべきところは叱る」という当然の結論が導かれるように思いました。
とはいえ、平時から意識していなければ「ほめるべきところでほめる」ができない局面もあります。先日、日本年金機構で起きた情報流出事故。ネット上で人々の反応をみると、不審なメールを開いてしまったことを責める声も少なくありません。ただ、経営者や管理者がそれと同じように社員を「叱る」のは、情報セキュリティの観点からはまったくの誤りです。
万が一、ウイルスに感染してしまった場合に、被害を最小限にとどめるには、感染の事実をいち早く経営者やシステム管理者が把握し、ウイルスの動きを封じ込めることが最優先事項。そのためには、不審なメールやサイトを開いた社員が「やってしまったかもしれない」と臆せず上司に報告できる話せる職場の空気も、セキュリティ向上のためには重要です。皆様の職場では、セキュリティ事故という不都合な報告を「まずほめる」文化が根づいているでしょうか。(日高彰)
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年金個人情報流出事件の教訓 経営層に求められる正しい認識 メールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.6.24」より