成功する秘訣は地域の「人」にあった

 日本を訪れる外国人観光客は、2013年に1036万人と初めて1000万人を超え、昨年は1341万人に達した。このうちアジア圏からの観光客は1081万人。経済波及効果の大きい観光産業は、少子高齢化や地方の疲弊に悩む日本にとって、数少ない成長分野である。リゾート法は失敗したが、政府も2003年の観光立国宣言を皮切りに次々と政策を打ち出し、これが冒頭挙げた数字につながっているといえるだろう。

 しかし、観光は政策だけでは成り立たない。観光客を受け入れる地元の人々が自ら動かなければ、人は訪れず、リピーターは生まれないのだ。

 1990年頃、話題になった徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」を覚えておられるだろうか。料亭の皿や椀を彩る季節のつまものを供給するビジネスで、年収1000万円のおばあちゃんたちを生んだことで、一躍アイデア農業の花形に躍り出た。上勝町は、その後も「いろどり」というビジョンを掲げて農業・観光の活性化に取り組み、いまでは年間8万人が訪れる観光スポットに成長した。この事業のプロデューサーの一人が著者である。キーワードは「人は誰でも主役になれる」である。

 上勝町の例を除けば、成功の秘訣までくわしく言及した事例は少ない。しかし著者が書いているように、そのぶんアイデアは満載。どの町にも必ずある神社仏閣を起点にした観光や、農業・健康・グルメ・趣味などを切り口にしたイベント・体験型観光、SNSを効果的に活用する観光など、「住む人も訪れる人も光り輝く地域をつくる」方法を列挙している。これだけでも一読の価値ありだ。(叢虎)


『稼げる観光』
地方が生き残り潤うための知恵
鈴木俊博 著
ポプラ社 刊(780円+税)