農業はオランダに学べ

 週刊『モーニング』で大人気連載となった島耕作シリーズ。電機メーカーの課長からスタートした主人公は、役員を経て社長まで登りつめた。そして、今や会長だ。物語の生みの親は、「会長・島耕作」に何をさせようというのか。

 島耕作、つまり作者の弘兼憲史氏に多大な影響を与えたのは、旧知の新浪剛史氏だったという。新浪氏は、当時、ローソングループの社長兼CEOだった。新浪氏は、2013年1月から日本経済再生本部の「産業競争力会議」の民間議員を務め、農業に力を注いでいた。

 そんな経緯から、本書の第一章は「新浪剛史×弘兼憲史の農業立国宣言」と、やや勇ましいフレーズの対談でスタートしている。その話のなかで興味深いのは、オランダの農業の特異性だ。オランダは九州くらいの大きさの国土で、農地面積は日本の約4割でしかない。それでいて、オランダは農産物輸出額で米国に次ぐ世界二位だという。新浪氏によると、「日本はあらゆる農産物に手を出している一方で、どれも規模が小さい。オランダは生産する品目を政策的に絞っています。たとえばチーズも、原料の生乳はフランスから輸入し、加工してから輸出しています。狭い国土は畜産に向いていないからです」。

 以下の章は、弘兼流取材力がいかんなく発揮されている。日本酒『獺祭』の世界進出マーケティング、採卵からの完全養殖に成功した『近大マグロ』の育成プロセスなど、農業従事者以外の人が読んでも大いに興味を引かれる内容になっている。(仁多)


『島耕作の農業論』
弘兼憲史 著
光文社 刊(760円+税)