BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『シェアリング・エコノミー』

2015/11/05 15:27

週刊BCN 2015年11月02日vol.1602掲載

ITが可能にした「新しい取引」

 既得権の破壊者は、時代の寵児となりやすい。話題性があるため、担ぎやすいだけのことだが、なかには世界を変える破壊者もいるため、最低限のことは知っておくべきだろう。

 このところ何かと世間を騒がしているのが、Uber(ウーバー)とAirbnb(エアビーアンドビー)だ。「なぜ、日本のIT業界はUberのようなビジネスモデルを生み出せないのか」と主張するジャーナリスト的な米国万歳論者に乗せられたのかどうかは知らないが、既得権の破壊者として話題となっている。

 Uberが破壊するのは、タクシー業界という既得権である。自動車を保有していれば、誰でも有料で乗客を運ぶことができ、乗客は既存のタクシーよりも安い運賃で乗車できる。Uberは、運転手と乗客をマッチングするアプリとサービスを提供する。既存のタクシー業界を壊滅へと追い込む可能性があるため、タクシーの高い運賃と既得権に不満をもつ人たちが支持しているというわけだ。

 Airbnbは、ホテル業界の既得権がターゲット。個人所有で使っていない部屋や家と、旅行者などをマッチングするサービスだ。物件所有者は宿泊料金を稼ぐことができ、利用者はホテルなどよりも安く宿泊できる。

 本書のタイトルになっている「シェアリング・エコノミー」とは、UberやAirbnbのように、モノやサービスをシェアしたり、融通し合ったりする仕組みを指す。それが世界を変えるという。本当なのか。知らないよりは、知っていたほうがいいくらいのマインドで読むことをオススメする。(亭)


『シェアリング・エコノミー』
宮崎康二 著
日本経済新聞出版社 刊(1600円+税)
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